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作物学:近年新しく栽培化された作物テンサイのゲノム

Nature 505, 7484 doi: 10.1038/nature12817

テンサイ(Beta vulgaris ssp. vulgaris)は重要な温帯作物で、世界の年間砂糖生産量の30%近くをもたらし、バイオエタノールや家畜飼料の原料でもある。テンサイはナデシコ目(Caryophyllales)に属する二倍体植物で、2n = 18本の染色体を持ち、ゲノムサイズは714~758メガ塩基と推定されていて、他の真正双子葉類とともに古代にゲノム三倍化を経験している。フダンソウ(リーフ・ビート)はローマ時代から栽培されているが、テンサイは最も新しく栽培化された作物の1つである。テンサイは18世紀末に、フダンソウと家畜飼料用ビートとを交配して、貯蔵根に砂糖を蓄積する系統を選抜することによって作出された。今回我々は、バラ亜綱、キク亜綱以外の初めての真正双子葉類ゲノムとして、テンサイのゲノム参照塩基配列を解読し、比較ゲノミクスと系統発生解析を進展させた。このゲノム配列は567メガ塩基からなり、その85%が染色体に帰属できる。アセンブリでは、約63%と推定される反復配列のかなりの部分が網羅されている。転写産物データからの裏付けのあるタンパク質コード遺伝子は27,421個と推定され、塩基配列の相同性に基づいてアノテーションが行われた。系統発生解析により、ナデシコ目の分岐がキク亜綱とバラ亜綱の分岐よりも前であることを示す証拠が得られ、系列特異的な遺伝子ファミリーの拡大と喪失が明らかになった。我々は、やはりナデシコ目に属するホウレンソウ(Spinacia oleracea)の塩基配列も解読し、このクレードとバラ亜綱、キク亜綱とを別に分類する根拠となる特徴を確認した。さらに、ハマフダンソウ(Beta vulgaris ssp. maritima:ビート作物全ての祖先)に加えて別の4つのテンサイゲノム系統のゲノム塩基配列に基づいて、種内でのゲノム変動の分析を行った。ゲノム参照配列には、変異のある位置が700万か所見つかり、変異性の低い、人為的選抜を示唆する広い領域も複数見つかった。テンサイのゲノム塩基配列は、農業上重要な形質に影響する遺伝子の同定を可能にし、分子育種を容易にして、エネルギー生物工学における植物の利用可能性を拡大するのに役立つ。

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