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構造生物学:新規なヒトコロナウイルスMERS-CoVとその受容体CD26間の結合の分子基盤

Nature 500, 7461 doi: 10.1038/nature12328

新たに出現した中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、ヒトで重症肺疾患を引き起こすことがあり、高病原性のコロナウイルスとしては、最初に出現したSARS-CoVに続く2番目の例である。CD26(別名ジペプチジルペプチダーゼ4;DPP4)は最近、MERS-CoVの細胞受容体であることが明らかにされた。MERS-CoVスパイクタンパク質とCD26の結合を介して、ウイルスの宿主細胞への付着とウイルス・細胞間の融合が起こり、それによって感染が開始される。今回我々は、MERS-CoVスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の、遊離状態とCD26との複合体の両方について、結晶構造を初めて示し、この特異的な相互作用の分子基盤について述べる。さらに、RBDとCD26間の結合を、表面プラズモン共鳴を用いて実時間測定し、16.7 nMという解離定数を得た。ウイルスのRBDは、SARS-CoVスパイクタンパク質のそれと相同なコア・サブドメインと、CD26のβプロペラ構造のブレードIVとVを認識する、ストランドが主の独特な外部受容体結合モチーフから構成されている。この2つの構造間の界面の原子レベルでの詳細な検討から、親水性の残基により主に仲介される予想外のタンパク質間接触が明らかになった。配列アライメントにより、βコロナウイルス間では、MERS-CoVのRBDコアと相同な領域の構造は保存されていると予想されるが、受容体認識のようなウイルス特異的発症機序に関わる外部受容体結合モチーフ領域については高い多様性が見られると考えられる。

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