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分子生物学:PfSETvsによるヒストンH3K36メチル化は熱帯熱マラリア原虫の毒性遺伝子を抑制する

Nature 499, 7457 doi: 10.1038/nature12361

熱帯熱マラリア原虫感染赤血球膜タンパク質1(PfEMP1)は、熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparumに感染した赤血球の表面に発現される変異しやすい抗原で、マラリアの重要な毒性因子である。原虫は、60種類の抗原性の異なるvar遺伝子を持ち、各遺伝子が異なるPfEMP1タンパク質をコードしている。感染の際、原虫のクローン集団は一度に1種類の遺伝子だけを発現しており、その後、宿主の抗体応答を避ける免疫回避機構として、別の新たな変異抗原を発現するように切り替えが起こる。しかし、60個のvar遺伝子のうち59個の発現を抑制する仕組みは、ほとんど解明されていない。今回我々は、PfSETvsP. falciparum variant-silencing SET gene)はショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のASH1のオルソログをコードしており、var遺伝子上のヒストンH3リシン36トリメチル化(H3K36me3)を制御していること、またPfSETvsをノックアウトすると、1匹の原虫の核内で事実上全てのvar遺伝子が転写され、個々の感染赤血球の表面にタンパク質として発現されることを明らかにする。PfSETvsに依存しているH3K36me3は、転写開始部位を含めた遺伝子本体(gene body)全体に見られ、var遺伝子を抑制する。var遺伝子の転写開始部位とイントロン内プロモーターの両方にPfSETvsが少ないと、var遺伝子の発現と同時に、それに対応するアンチセンス長鎖非コードRNAの転写も起こる。これらの結果は、熱帯熱マラリア原虫のvar遺伝子の抑制に、PfSETvsに依存したH3K36me3がこれまでは知られていなかった役割を果たしていることを明らかにしている。これは一般的な機構である可能性があり、他の真核生物でもPfSETvsのオルソログが遺伝子発現を抑制しているかもしれない。また、PfSETvsノックアウトによって全てのPfEMP1タンパク質を発現するようになった熱帯熱マラリア原虫は、マラリアワクチンの開発に使える可能性がある。

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