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進化:チョウのゲノムで明らかになった、種間での擬態適応遺伝子の無差別な交換

Nature 487, 7405 doi: 10.1038/nature11041

交雑および遺伝子移入の進化的重要性に関しては、ずっと以前から議論が続いている。雑種は希少であって適応しないのが通常であるが、交雑がまれであっても、種間で有益な形質を転移させることによって適応を支援する場合がある。今回我々は、ゲノミクスの手法を使って、ドクチョウ属(Heliconius)の遺伝子移入を調べた。新熱帯区に生息するドクチョウ属は高速で適応放散しており、生態、行動、擬態、および種分化の研究に広く用いられている。我々は、Heliconius melpomeneのゲノム塩基配列を解読し、それをほかの分類群と比較することにより、鱗翅目の染色体進化、ならびにドクチョウ属の複数の種および品種の間の遺伝子流動を調べた。予測された遺伝子12,669個の中では、化学的感覚遺伝子およびHox遺伝子のファミリーの生物学的に重要な拡大が特に顕著であった。染色体の構成は、チョウ類がカイコガ属(Bombyx)の系統から分岐した白亜紀以後、広く保存されたままである。ゲノム塩基配列の再解析により、Heliconius melpomeneHeliconius timareta、およびHeliconius elevatusという相互擬態種3種の間で、雑種による遺伝子交換、特に擬態のパターンを支配するゲノム領域2か所にこうした遺伝子交換が認められた。ドクチョウ属の近縁な種どうしが保護色パターンの遺伝子を無差別に交換しているものと推測され、このことは、交雑が適応放散で重要な役割を担っていることを意味している。

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