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医学:乳がんのさまざまなサブタイプに見られる変異と転座の塩基配列解析

Nature 486, 7403 doi: 10.1038/nature11154

世界的に、乳がんは女性のがん関連死の主要な原因であり、2008年だけでも新たな症例は138万例、死亡は45万8,000人に上ったと推定されている。乳がんは、特徴的な分子特性、予後、既存の治療法に対する反応性が違う異種のがんからなる悪性腫瘍群である。乳がんでは、変異やコピー数変化などといった体細胞変異の頻発が報告されており、特にERBB2遺伝子の増幅は、ゲノムの異常から見つかった治療標的として初めての成功例となっている。乳がんゲノムのこれまでのDNA塩基配列解読研究によって、これ以外にも、治療標的の候補となる変異や遺伝子再編成が判明している。本論文では、メキシコとベトナムの患者から得たさまざまなサブタイプに属する103のヒト乳がん由来DNAの全エキソーム塩基配列を対応する正常DNAと比較し、さらに22組の乳がん/正常ペアの全ゲノム塩基配列についても報告する。PIK3CATP53AKT1GATA3MAP3K1の体細胞変異の頻発を確認できただけでなく、転写因子遺伝子CBFBにも変異が頻発することや、その結合相手となるタンパク質の遺伝子RUNX1の欠失も明らかになった。さらに、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ERBB2の発現がどれも失われているトリプルネガティブ(三重陰性)の乳がんでは、MAGI3AKT3融合が多く見られることが判明した。MAGI3–AKT3融合によってAKTキナーゼが構成的に活性化されるが、これは、ATP拮抗型の低分子AKT阻害剤の投与で抑制できる。

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