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医学:2–ヒドロキシグルタル酸の(R)–エナンチオマーによるEGLN活性化と結びついた形質転換

Nature 483, 7390 doi: 10.1038/nature10898

ヒトのがんで、コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)、フマル酸ヒドラターゼ(FH)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)の変異が見つかり、細胞内代謝の変化が細胞の悪性転換を引き起こすことがあるという考えが再び関心を集めている。SDHやFHを不活性化する変異は、それぞれコハク酸、フマル酸の蓄積を引き起こし、EGLNプロリル4–ヒドロキシラーゼなどの2–オキソグルタル酸(2-OG)依存性の酵素を阻害する可能性がある。EGLNプロリル4–ヒドロキシラーゼは、転写因子である低酸素誘導因子(HIF)にポリユビキチン化とプロテアソーム分解のための標識を付ける働きをする。HIFの不適切な活性化は、SDHやFHに欠陥のある腫瘍の病因の1つだと考えられているが、これらとは別の状況においてはHIF活性化は腫瘍の増殖を抑制している可能性がある。IDH1とIDH2は、イソクエン酸と2-OGの相互変換を触媒する酵素で、ヒトの脳腫瘍や白血病ではこれらが変異していることが多い。生じた変異体は、2-OGを2–ヒドロキシグルタル酸の(R)–エナンチオマー((R)-2HG)へ変換するという新しい形質を持つ。今回我々は、(R)-2HGが、EGLN活性を促進するという(S)-2HGには見られない作用を持ち、その結果HIFレベルが低下して、ヒト星状膠細胞の増殖と軟寒天での成長が促進されることを示す。これらの知見は、IDHに変異がある脳腫瘍に蓄積した(R)-2HGが悪性転換を促進するという、エナンチオマー特異的機構の存在を明らかにしており、治療戦略としてEGLN阻害を調べる根拠を与えている。

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