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遺伝:ブタ回虫の概要ゲノム塩基配列

Nature 479, 7374 doi: 10.1038/nature10553

寄生虫病は、世界中の人の健康、福祉および食糧生産にきわめて深刻な長期的影響を及ぼす。主としてアジア、アフリカおよびラテンアメリカの発展途上国または貧困国で、20億人以上が回虫(Ascaris)、鉤虫(NecatorおよびAncylostoma)、鞭虫(Trichuris)などの土壌伝播蠕虫類に感染している。これらの寄生虫によって引き起こされる疾患で毎年約13万5,000人が死亡し、障害調整生存年数においてマラリアや結核に匹敵する世界的負担となっている。回虫のみでも感染者は約12億人に上り、小児では栄養不足を引き起こす結果、身体的および認知的発達が妨げられ、重度の場合は死に至る。さらにブタでも、低成長、発育障害および死亡による重大な生産性の損失をもたらす。回虫–ブタ系をモデルとして使用すれば、回虫について、また回虫と宿主との関係や分子レベルでの回虫症についての研究が可能となる。このような分子レベルの研究を可能にするために、我々はブタ回虫(Ascaris suum)の273メガ塩基にわたる概要ゲノム塩基配列を報告し、他の線形動物のゲノムと比較した。このゲノムは反復配列の含有量が少なく(4.4%)、約1万8,500個のタンパク質コード遺伝子をコードしている。特にブタ回虫のセクレトーム(約750分子)は、宿主組織への侵入およびその分解に関連するペプチダーゼを多く含んでおり、分子集合体の1つは宿主の免疫応答を調節または回避する可能性が高いことは重要である。このゲノムは科学界にとって包括的な情報源となるだけでなく、回虫症およびその他の線虫症に対して緊急に必要とされる新規治療介入(薬剤、ワクチンおよび診断法)の開発を後押しするものとなる。

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