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遺伝:ゲノム塩基配列の解読から得られたハダカデバネズミの生理学的特性および長寿に関する手がかり

Nature 479, 7372 doi: 10.1038/nature10533

ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)は完全な地中生活動物であり、並外れて長命な真社会性哺乳類である。大きさはマウスほどであるが、寿命は最長で30年を超え、最も長命な齧歯類である。ハダカデバネズミでは老化がほとんど認められず、加齢に伴う死亡率上昇もなく、死ぬまで高い生殖能力が維持される。また、老化の遅延に加え、自然発生的ながんおよび実験的に誘発した腫瘍形成のいずれにも抵抗性を示す。この動物は、老化、がん、および酸化還元恒常性を関連付ける理論にとって難問の1つとなっている。ハダカデバネズミのプロテオームは、著しい酸化ストレスが特徴的だが、加齢に伴う酸化損傷感受性やユビキチン化の増大は認められない。このネズミは自然界では大型コロニーで暮らし、各コロニーには生殖を担う1匹の雌すなわち「女王」がいて、下位個体の性的成熟を抑制している。ハダカデバネズミは、酸素濃度が低く二酸化濃度が高い完全な暗黒状態下でも暮らしており、熱発生を維持する能力はなく、ある種の疼痛を感知する能力も持たない。今回我々は、ハダカデバネズミのゲノム塩基配列の解読と解析を行い、がん抵抗性、変温性、無毛性、および低酸素非感受性、並びに視覚機能、概日リズム、および味覚感知の変化と合致する独特のゲノム特性および分子的適応を明らかにした。この情報は、ハダカデバネズミの並外れた長寿命、および低酸素で暗いという苛酷な条件下で生息する能力を解明するための手がかりとなる。ハダカデバネズミの極端な形質に、今回のゲノムおよびトランスクリプトームの情報を合わせることで、老化の解明や、生物学および生物医学研究の他の領域を進展させるための機会が得られる。

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