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がん:ヒトアリール炭化水素受容体の内在性発がん促進リガンド

Nature 478, 7368 doi: 10.1038/nature10491

2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p -ジオキシン(ダイオキシン)などの環境由来生体異物有毒化学物質によるアリール炭化水素受容体(AHR)の活性化は胚発生、形質転換、腫瘍発生、炎症などの多様な細胞過程にかかわると考えられてきた。しかし、環境毒性化学物質のない生理的な条件下でAHRを活性化する内在性リガンドが何であるかはいまだ不明である。本論文では、トリプトファン(Trp)の異化代謝産物であるキヌレニン(Kyn)がヒトAHRの内在性リガンドであることを示す。Kynはヒト腫瘍細胞でトリプトファン-2,3–ジオキシゲナーゼ(TDO)により持続的に産生されており、肝や神経由来のTrp分解酵素であるTDOはこれまでがんの生物学的性質に関連しているとは考えられていなかった。TDOに誘導されるKynは、オートクリン/パラクリン機構によりAHRを介して抗腫瘍免疫応答を抑制し、かつ腫瘍細胞の生存や運動能を促進している。TDO–AHR経路はヒト脳腫瘍で活性化しており、悪性化や生存率低下に関連している。Kynはがんの進展や炎症の際に局所微小環境内でヒトのAHRを活性化するのに十分な量が作られているため、今回の結果は、これまで明らかにされていなかったAHRの病態生理上の機能についての証拠となり、がんや免疫生物学に大きな影響を及ぼす深い意味を持つ。

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