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遺伝:一卵性双生児多発性硬化症不一致例のゲノム、エピゲノムおよびRNA塩基配列

Nature 464, 7293 doi: 10.1038/nature08990

一卵性、すなわち「同一な」双生児は、ヒトの疾患に遺伝や環境が及ぼす相対的寄与を解析するうえで、広く研究されてきた。多発性硬化症(MS)は、脱髄性自己免疫疾患であり、若年者の神経変性および身体障害でよくみられる原因となっているが、一卵性双生児に疾患不一致例が存在することから、その病因における環境の重要性が指摘されている。しかし、一卵性双生児間での遺伝的相違およびエピジェネティックな相違が明らかにされ、先天的なものと後天的なものの影響を明確にするうえで広く受け入れられている実験モデルに異議を唱えるものとなっている。今回我々は、一卵性双生児MS不一致例1組のゲノム塩基配列、並びに一卵性双生児MS不一致例3組のCD4+リンパ球のメッセンジャーRNA、トランスクリプトームおよびエピゲノム塩基配列について報告する。約360万個の一塩基多型(SNP)にも、約20万個の挿入欠失多型にも、双生児間で再現性のある差異は認められなかった。さらに、この3組の双生児の同胞間におけるHLAハプロタイプ、MSへの感受性が確認されているSNP、コピー数多型、mRNAおよびゲノムSNPおよび挿入欠失遺伝子型、CD4+ T細胞の約19,000個の遺伝子の発現でも、再現性のある差異は認められなかった。約200万個のCpGジヌクレオチドのメチル化では、この3組の双生児の同胞間で検出された差異はわずかに2〜176で、非血縁者のT細胞間におけるメチル化の差異が約800、組織間、または正常組織とがん組織との間の差異が数千であったのとは対照的である。今回の研究は、一卵性双生児における塩基配列変異を初めて系統的に推定する試みであったが、疾患不一致を説明付ける遺伝的差異、エピジェネティックあるいはトランスクリプトームにおける差異の証拠は見いだせなかった。本研究は、我々の知るかぎりにおいて、双生児の女性自己免疫疾患患者を対象としたヒトゲノム塩基配列に関する最初の報告である。

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