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遺伝:ペリゴール産黒トリュフのゲノムから明らかになった共生の進化的起源とその機構

Nature 464, 7291 doi: 10.1038/nature08867

現在のトリュフ市場では、ペリゴール産の黒トリュフ(Tuber melanosporum Vittad.)およびピエモンテ産の白トリュフが大きなシェアを占めている。T. melanosporumの地下生の子実体は、ヨーロッパ南部の石灰質土壌に特有の外生菌根共生菌が形成する、美食家向けの食材である。トリュフに対する世界的な需要に後押しされて、栽培化に向けた研究が盛んに行われている。子実体および共生関係の形成を調整し開始させる過程の解明は、究極的には効率的な作物生産につながるものであり、トリュフのゲノムの特徴を詳細に分析することによって促進されるだろう。外生菌根性のオオキツネタケ(Laccaria bicolor)では、遺伝子ファミリーの拡大が「共生の道具箱」として働いたと考えられる。しかし、この特徴は、この特定の分類群の進化を反映するものであって、外生菌根性の種すべてに共通の形質ではない可能性がある。本論文では、外生菌根共生菌の生物学的性質や進化に関する解明を進めるため、T. melanosporumの半数体ゲノムの塩基配列を明らかにした。この約1億2,500万塩基のゲノムは、これまでに塩基配列が明らかにされている菌類ゲノムの中で最大かつ最も複雑なものである。この巨大化は、ゲノムのおよそ58%を占める転移因子の増幅によるものである。一方、このゲノム内でタンパク質をコードする遺伝子はおよそ7,500個に過ぎず、多重遺伝子ファミリーは極めて少ない。糖質切断酵素の大規模群は存在しないが、共生組織では、植物細胞壁の分解に関与する少数の糖質切断酵素が誘導される。後者の特徴と、リパーゼおよびマルチ銅オキシダーゼをコードする遺伝子の上方調節は、T. melanosporumが宿主に定着するときに宿主の細胞壁を分解することを示唆している。L. bicolorでもT. melanosporumでも、共生によって糖質およびアミノ酸の輸送体の発現量増大が誘導されるが、この2つの外生菌根共生菌のゲノムの特徴の比較により、子嚢菌類と担子菌類では、共生のための遺伝的素因である「共生の道具箱」が異なる道をたどって進化したことが明らかにされた。

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