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医学:RAF阻害剤は、野生型BRAF細胞のRAF二量体およびERKシグナル伝達をトランス活性化する

Nature 464, 7287 doi: 10.1038/nature08902

BRAF変異を有する腫瘍は、RAF–MEK–ERKシグナル伝達経路に依存して増殖する。我々は、ATP競合的RAF阻害剤は、変異型BRAFを有する細胞のERKシグナル伝達を阻害するが、野生型BRAFを有する細胞のシグナル伝達は予想外に増強することを見いだした。本論文では、これらの知見の機構的基盤を明らかにする。化学遺伝学的手法を用い、薬物によるRAF二量体のトランス活性化が、阻害剤によるこの酵素の異常な活性化の原因となっていることがわかった。ERKシグナル伝達の誘導は、二量体の1つのキナーゼのATP結合部位への薬物の直接結合を必要とし、RASの活性に依存する。薬物がRAFのホモ二量体(CRAF–CRAF)またはヘテロ二量体(CRAF–BRAF)の1つのサブユニットに結合することにより、1つのプロトマーが阻害されるが、その結果、薬物が結合していないプロトマーのトランス活性化が生じる。BRAF(V600E)腫瘍では、RASが活性化されないため、このトランス活性化は最小となり、RAF阻害剤に曝露された細胞でのERKのシグナル伝達が阻害される。この結果から、RAF阻害剤は変異BRAFを有する腫瘍に有効であると考えられる。さらに、このモデルではRAFの阻害剤はほかの細胞のERKシグナル伝達を阻害しないため、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤よりも高い治療指数並びに大きな抗腫瘍活性をもつが、MEK/ERKの活性化による毒性がある可能性も予測される。これらの予測は、最近実施されたRAF阻害剤PLX4032の臨床試験でも裏付けられている。このモデルは、野生型RAFの発現またはRAS活性の上昇によってRAFの二量体化が促進されることにより、BRAF変異腫瘍に薬剤耐性が生じる可能性を示している。この予測に合致して、RAF阻害剤は、BRAF(V600E)および変異型RASを共発現する細胞のERKシグナル伝達は阻害しない。

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