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医学:RAF阻害剤は野生型RAFを刺激することにより、MAPK経路を活性化して増殖を促す

Nature 464, 7287 doi: 10.1038/nature08833

KRASおよびBRAFの活性型変異はそれぞれ、全ヒト腫瘍の30%以上、メラノーマの40%以上にみられることから、この経路を標的とした治療には広範囲な効果が期待される。低分子ATP競合的RAFキナーゼ阻害剤は変異型BRAF(V600E)腫瘍に強力な抗腫瘍効果をもつが、この阻害剤はマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤とは対照的に、RAFがRASの下流およびMEKの上流で主要なエフェクターとして機能しているにもかかわらず、RAS変異腫瘍モデルに対しては強力な抗腫瘍効果をもたない。本論文では、ATP競合的RAF阻害剤には、細胞の状況に依存する、相反する2つの作用機構があることを示す。BRAF(V600E)腫瘍では、RAF阻害剤は、効果的にマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路を遮断し、腫瘍の増殖を低下させる。KRAS変異腫瘍やRAS/RAF野生型腫瘍では、RAF阻害剤は、RAS依存的にRAF–MEK–ERK経路を活性化するため、いくつかの異種移植モデルにおいて腫瘍の増殖を高めることは注目に値する。阻害剤の結合によって、二量体化、膜への局在、およびRAS–GTPとの相互作用が誘導されることで、野生型RAFアイソフォームが活性化される。これらは、キナーゼ阻害とは独立して起こるが、その代わりに、阻害剤のコンホメーションがRAFのキナーゼドメインに与える直接的効果と関連している。我々は、これらの知見に基づき、ATP競合的キナーゼ阻害剤が、細胞の状況に依存して、シグナル伝達経路の阻害剤あるいは活性化剤としての相反する機能をもちうることを示す。さらに、この研究から、ATP競合的RAF阻害剤の治療への応用について、新しい手がかりが得られる。

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