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遺伝:Phaeodactylumのゲノムから明らかになった珪藻ゲノムの進化の歴史

Nature 456, 7219 doi: 10.1038/nature07410

珪藻類は、光合成能をもつ二次内部共生体で海洋環境と淡水環境にわたって広く分布し、地球の一次生産能力のおよそ5分の1を担っていると考えられている。海洋性の中心目珪藻Thalassiosira pseudonanaのゲノム塩基配列が最近報告され、珪藻に関するさまざまな生物学的情報が明らかになった。本論文では、羽状目の珪藻Phaeodactylum tricornutumのゲノムの完全塩基配列を報告し、これをT. pseudonanaと比較して、進化起源や機能的重要性、これらの性質の珪藻類全般にわたる普遍性を明らかにする。羽状目珪藻と中心目珪藻の系統は分離してからわずか9,000万年しか経っていないが、そのゲノム構造は著しく異なっており、2つの系統の代表格であるこの2つの珪藻ゲノムでは、遺伝子のかなりの割合(約40%)が共通ではない。酵母や後生動物の分子分岐との比較解析から、珪藻では遺伝子多様化の速度が非常に速いことがわかる。これに寄与する要因としては、遺伝子ファミリーの選択的拡大、遺伝子やイントロンの特異的な喪失、獲得、転移因子の特異的移動などが挙げられる。最も注目すべき事実として、細菌由来の遺伝子が数百個存在することが挙げられる。どちらの珪藻にもこのような遺伝子移動が300例以上見つかり、その起源が古いことを立証している。またその多くは、代謝産物の管理や環境シグナル感知の新しい能力をもたらしている可能性がある。これらの知見によって、現在の海洋における珪藻類の驚異的な多様性と繁栄の理由の解明が大きく進むだろう。

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