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医学:キンシャサでは1960年までにHIV-1の多様化が進んでいたことを示す直接証拠

Nature 455, 7213 doi: 10.1038/nature07390

ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の出現時期や進化の時間尺度を解明するには、エイズが初めて発見されるよりも前のウイルスの塩基配列が極めて重要である。1959年のウイルス塩基配列(ZR59)が、既知のHIV-1感染では最も古い。歴史的に記録されている塩基配列が他にあれば、進化上の距離を時間に変換するための重要な較正点となるが、そういったものは存在しておらず、ZR59が1976年以前の唯一の塩基配列である。今回我々は、1960年にベルギー領コンゴのレオポルドヴィル(現在のコンゴ民主共和国(DRC)のキンシャサ)で成人女性から採取され、ブアン固定しパラフィン包埋されたリンパ節生検標本から、ウイルス塩基配列を増幅し、特徴を明らかにした。さらにこれを用いて、エイズ大流行前の初期のHIV-1グループMウイルスに関して、初めての進化遺伝学的比較解析を行った。系統発生解析により、このウイルス塩基配列(DRC60)は、サブタイプA(A2を除く)の祖先となるノードに最も近い位置にあることがわかった。DRC60、ZR59を含めて分子時計を緩めた解析を行ったところ、グループMの最終共通祖先は20世紀初頭近くに位置づけられた。DRC60とZR59の間の遺伝的距離がかなり大きいことから、西・中央アフリカ地域でのHIV-1の多様化は、エイズの流行が認識された時期のずっと前に起こっていたことが直接的に実証できた。数十年たったパラフィン包埋組織からウイルス遺伝子の塩基配列を復元できたことによって、他の方法では不可能なHIV-1の進化史の詳細な古ウイルス学的研究への扉が開かれた。

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