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生化学:オセルタミビル耐性インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ変異体の結晶構造

Nature 453, 7199 doi: 10.1038/nature06956

インフルエンザの世界的大流行が起こった場合の影響の大きさを考えると、ウイルス感染の拡大と死亡率を抑える有効な対策を立てることは、公衆衛生の重要課題である。新型ウイルスによるインフルエンザの最初の流行の拡大防止には抗ウイルス薬が必要不可欠と考えられており、大流行前の計画は薬剤の備蓄に大きく依存している。これら抗ウイルス薬の主な標的となるのがウイルス表面の糖タンパク質ノイラミニダーゼで、この酵素は複製されたウイルスの放出を促し、感染を拡大させる。現在使われているノイラミニダーゼ阻害剤2種類とはオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)で、これらは酵素構造の知見に基づいて開発された。こういった阻害剤は、天然の基質に似ていれば似ているほど、生存力を維持する薬剤耐性変異株ウイルスが選択される確率は低くなると考えられている。しかし、in vitroで、また感染者からも薬剤耐性変異株が選択されたことが報告されている。今回我々は、H5N1感染患者由来のノイラミニダーゼ変異株の酵素特性と結晶構造について述べ、これらから耐性の分子基盤を説明する。これらの変異株は、酵素の活性部位中にあるオセルタミビルの結合に必要な疎水性ポケットが変化しているためにオセルタミビルには耐性をもつようになるが、ザナミビルによっては強く阻害されることがわかった。このような変異型のノイラミニダーゼをもつH5N1ウイルスとH1N1ウイルスの生存能力や病原性に関する最近の報告と今回の知見とを考え合わせると、大流行に備えたオセルタミビルの備蓄に、ザナミビルなどの他の抗ウイルス薬を含めて拡大することが賢明と考えられる。

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