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物理:量子ドットにおける単一正孔スピンの光ポンピング

Nature 451, 7177 doi: 10.1038/nature06472

電子のスピンは、固体状態で量子ビットを実現する自然な2準位系になる。半導体量子ドットにトラップされた電子では、フォノンが媒介するスピン緩和の弊害を強い量子閉じ込めによって強く抑制できる。しかしこの利点も、電子スピンが量子ドット中のホスト原子核の104個から106個のスピンと超微細相互作用をもつために相殺されてしまう。核スピン集団がランダムに揺らぐと、約10ナノ秒の高速なスピンデコヒーレンスが起こる。超微細相互作用を軽減するのにスピンエコー法が使われてきたが、核スピン揺らぎを完全に打ち消す方がより望ましい。原理的には、すべての核スピンを偏極してしまえばこれを達成できるが、実現は非常に難しい。核スピンが零の物質の利用も1つの方法であり、カーボンナノチューブ、グラフェン量子ドット、およびシリコンが提案されている。また別の選択肢は、半導体の正孔を使うことである。電子とは異なり、量子ドットの価電子正孔は原子p軌道をもち、この軌道は都合がよいことにすべての原子核位置で零になり、核スピンとの相互作用が大きく抑制される。さらに、強い歪みあり、強く量子化が起こる量子ドットでは、スピン3/2の重い正孔はスピン1/2系のように振る舞い、そしてスピンデコヒーレンス機構が弱い。本論文では、自己集合した量子ドット中に閉じ込めた単一正孔スピンを、光ポンピングによって高いフィデリティ(約99パーセントの)で初期化できることを実証する。我々の方法は零磁場でもうまくいくことから、正孔スピンの超微細相互作用が無視できることが実証された。低磁場の正孔スピン緩和時間は約1ミリ秒と決定された。この結果から、光子の偏極によってスピン状態を内部転換できる固体量子ネットワークを実現する方法が示唆される。

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