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細胞:14-3-3σは、有糸分裂時の翻訳を制御して細胞質分裂を促進する

Nature 446, 7133 doi: 10.1038/nature05584

14-3-3タンパク質は、細胞周期の進行、DNA損傷チェックポイント、アポトーシスなど、さまざまな細胞応答に重要な役割を果たしている。14-3-3のアイソフォームの1つであるσはp53応答性遺伝子で、乳癌、前立腺癌などのヒト腫瘍ではその機能が失われていることが多い。その原因は、14-3-3σプロモーターの過剰なメチル化か、14-3-3σを特異的に標的としてプロテアソーム分解させるエストロゲン応答性ユビキチンリガーゼの誘導である。14-3-3σタンパク質の消失は、腫瘍自体の内部に限って起こるのではなく、その周辺の前異形成組織でもみられ(いわゆる領域癌化)、このことは、14-3-3σが重要な癌抑制因子機能をもち、腫瘍の進展過程の早い時点で失われる可能性を示している。14-3-3σの癌抑制因子機能の分子基盤は解明されていない。今回我々は、有糸分裂時に翻訳調節因子として働くという、14-3-3σのこれまで知られていなかった機能について報告する。この機能は、有糸分裂時特異的にさまざまな翻訳/開始因子に直接結合することによるもので、真核生物の翻訳開始因子4Bへも化学量論的に結合する。14-3-3σをもたない細胞は、正常細胞とは大きく異なり、キャップ依存性翻訳が抑制できず、有糸分裂時とその直後のキャップ非依存性翻訳も促進できない。このような翻訳機構の切り替えの欠陥により、有糸分裂時特異的な、内在性IRES(internal ribosomal entry site)依存型のサイクリン依存性キナーゼCdk11(p58 PITSLRE)の発現が低下し、細胞質分裂の阻害、中央体のPolo様キナーゼ1の消失、二核細胞の蓄積につながる。14-3-3σ欠失細胞の異常有糸分裂表現型は、p58 PITSLREの強制的発現や、ラパマイシンを用いた有糸分裂の際のキャップ依存性翻訳の阻害とキャップ非依存性翻訳の亢進により救済できる。これらの知見は、14-3-3σが欠失している際の有糸分裂時翻訳異常により、有糸分裂の完了が妨げられて二核細胞を生じさせる仕組みを示しており、14-3-3σ欠失細胞が異数性や腫瘍発生へと進む理由の説明になる可能性がある。

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