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菌類:植物病原菌である生体栄養性菌類Ustilago maydisのゲノムに基づく考察

Nature 444, 7115 doi: 10.1038/nature05248

Ustilago maydisは広くみられるトウモロコシ病原菌で、植物と微生物との間の相互作用を研究するためのモデル生物となっている。この担子菌は、攻撃的な毒性戦略を用いて宿主を殺すようなことをしない。U. maydisは、増殖および発生を生体組織に依存する生体栄養性寄生生物(黒穂病菌類)に属している。本論文では、経済的に重要なこの生体栄養性菌類の一種がもつゲノムの塩基配列を示す。2,050万塩基から成るU. maydisのゲノムでは、タンパク質をコードすると予測される遺伝子が6,902個含まれるが、一連の細胞壁分解酵素など、攻撃的な病原性菌類のゲノムにみられる病原的特徴を欠いている。しかし、この生物のゲノムには、病原性をもたらす予想外の特徴が見いだされ、機能不明の小さな分泌タンパク質をコードする遺伝子クラスターが12個見つかった。こうした遺伝子の主要なものは、小規模な遺伝子ファミリー中に存在している。発現解析により、このようなクラスターに含まれる遺伝子の多くは一括して調節され、感染組織で誘導されることがわかった。クラスターを個別に欠失させると、徴候の完全消失から高毒性まで、U. maydisの毒性が5通りに変化した。U. maydisが 示す病原性の仕組みは長らく研究されてきたが、「真の」毒性因子は同定されていなかった。したがって、分泌タンパク質遺伝子クラスターの発見と、それが感染過程で担っている決定的役割の機能的解明は、生体栄養性菌類が発揮する病原性の、今までわからなかった機構を明らかにする。同様に、ゲノム解析はほかの病原体の毒性決定因子の発見につながると考えられる。

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