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進化:銅を含むプラストシアニンを電子伝達に用いる外洋性珪藻

Nature 441, 7091 doi: 10.1038/nature04630

必須金属の中には遠洋生態系への供給が需要に満たないものがあり、そのため植物プランクトンの多くは光合成生産速度が低く、増殖が制限されている。植物プランクトンが必要とする金属の種類および量はプランクトンの進化史や入手可能な金属量への適応に依存するが、金属の入手可能性は海洋の生息環境ごとに大きく異なっている。例えば、珪藻が成長に必要とする鉄はクロロフィルbを含む分類群に比べるとかなり少なく、外洋種の必要量は沿岸種のほぼ10分の1である。鉄と同じく銅も外洋には極めて少ないが、外洋種が成長に必要とする銅濃度は沿岸種に比べると著しく高い。本論文では、外洋性の珪藻であるThalassiosira oceanicaが大量の銅を必要とするのはもっぱら、銅を含むタンパク質であるプラストシアニンのためであることを示す。これまでプラストシアニンの存在が認められているのは、クロロフィルbをもつ生物およびシアノバクテリアのみであった。T. oceanicaと近縁の沿岸種であるT. weissflogiiを含めて、クロロフィルcを含む藻類はプラストシアニンをもたず、同じ機能を果たすが鉄を含む相同体であるシトクロムc6をもつと考えられている。T. oceanicaでは、鉄の供給状態とは関係なく、銅が欠乏すると電子伝達が阻害されることから、この種ではプラストシアニンが光合成の明反応に構成的役割をもつことが示唆される。この結果から、鉄量の制限による選択圧によって、外洋性珪藻は光合成に銅を含むタンパク質を用いるようになったと考えられる。この生化学的な切り替えによって鉄の必要量は減り、外洋に比較的多い銅の必要量が増大する。

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