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リボソームのプログラムされたフレームシフトにRNAシュードノットが果たす機能の機構的説明

Nature 441, 7090 doi: 10.1038/nature04735

トリプレットを基本にした遺伝暗号系では、正しいタンパク質を確実に合成するためには、翻訳を行うリボソームがメッセンジャーRNAの読み枠(フレーム)を忠実に維持することが必要である。しかし、プログラムされたリボソームマイナス1フレームシフトでは、特殊な方式のフレーム維持が起こり、重複したフレーム上でリボソームが強制的に後ろへ1ヌクレオチド分ずれて、まったく新しいアミノ酸配列を翻訳するようになる。HIVや重症急性呼吸器症候群の原因とされるコロナウイルスをはじめ、多くの病原性ウイルスの複製にはこの方式が不可欠だが、細胞のいくつかの遺伝子の発現にもこの方式が使われている。フレームシフトを促すmRNAシグナルは、2つの重要な要素で成り立っている。ヘプタヌクレオチドの「滑り配列」とそれに隣接するmRNAの二次構造で、これはmRNAシュードノットの場合が最も多い。この2つの要素がどのように協働してリボソームを動かすのかはわかっていない。本論文では、マイナス1フレームシフトの過程で停止したリボソーム-mRNAシュードノット複合体の観察結果を報告する。コロナウイルスのシュードノットのところで停止した、ウサギ網状赤血球由来の哺乳類の精製80Sリボソームを低温電子顕微鏡で観察したところ、フレームシフト過程の中間体が明らかになった。その結果、シュードノットがどのようにリボソームに結合してmRNAの進入チャネルをふさぎ、転移過程を損ない、P部位のトランスファーRNAをバネ状に変形させるかが観察できた。また、真核生物のリボソームヘリカーゼと思われるものの動きをとらえ、トランスロカーゼeEF2とP部位のtRNAとの直接の結合を確認した。これらを総合すると、シュードノットがリボソームを異なったフレームへとずらす機構は、これらの構造の変化で説明できる。

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