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遺伝:ヒトクリプトスポリジウムのゲノム

Nature 431, 7012 doi: 10.1038/nature02977

世界各地で急性胃腸炎と下痢の原因となっているクリプトスポリジウムは、病原性の原生動物アピコンプレクサの仲間である。アピコンプレクサは先端にある特殊な複合体を使って宿主細胞に侵入し、通常、無脊椎動物や中間宿主を介して伝染する。クリプトスポリジウムは、他のアピコンプレクサとは対照的に、接合子嚢の経口摂取によって伝染し、単一の宿主内で生活環が完結する。治療法はなく、対策の中心は給水系からの接合子嚢除去である。ヒトで最も問題になるのは、2種類のクリプトスポリジウムC. hominisC. parvumで、これらは宿主の範囲、遺伝子型、病原性が異なる。C. hominisは宿主がヒトに限られるが、C. parvumは他の動物にも感染する。本論文では、C. hominisの染色体8本に分かれた約920万塩基のゲノムを報告する。C. hominisのタンパク質コード遺伝子全体を見ると、生息する環境ニッチに必要な条件を非常によく満たしていることがわかる。エネルギー代謝は主として解糖による。好気的代謝と嫌気的代謝の両方が可能で、前者のためには、単純なミトコンドリア内に別の電子伝達系が必要となる。生合成能は限られており、そのため輸送体が種々揃っている。アピコプラストの存在を示すものはないが、アピカルコンプレックス小器官に関係した遺伝子は存在する。C. hominisC. parvumは全体として非常に似通った遺伝子をもつので、表現型の違いはわずかな配列の分岐に由来すると考えられる。

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