Editorial

大村智博士の2015年ノーベル医学生理学賞受賞を祝う

原文:The Journal of Antibiotics(2015年10月21日)|doi: 10.1038/ja.2015.113|Celebrating the 2015 Nobel Prize in Physiology or Medicine of Dr Satoshi Ōmura

竜田邦明 The Journal of Antibiotics 編集長

本誌の名誉編集長である大村智博士(北里大学特別栄誉教授)が、線虫感染症の新しい治療法の発見による功績で2015年ノーベル医学生理学賞を受賞されたことを本誌編集長として心よりお祝い申し上げます。大村博士の受賞は、治療薬イベルメクチンの発見と開発に関する主たる共同研究者であったウィリアム・キャンベル博士との共同受賞であり、また、広範に利用されている抗マラリア薬アルテミシニンの研究成果が認められた屠呦呦(Youyou Tu)氏も同時に受賞されました。

大村博士は、天然物化学と医薬品化学で数多くの発見を成し遂げられました。これらの発見は、全世界で、毎年、1200編前後の研究論文で引用されています。大村博士の果たされた多大な貢献は、微生物学、抗生物質の単離と構造解明、生合成、生化学研究、有機合成化学と驚くほど幅広い分野にわたっており、これらの研究貢献は、1000編以上の論文だけでなく数々の書籍や特許にも記述されています。

大村博士は、50年間の研究生活で180以上のタイプを含む480以上の新規生物活性物質を発見し、その多く(例えば、スタウロスポリンやラクタシスチン)が、医薬品やその工業の分野で、あるいは試薬として重要な役割を果たしています。その中でも最もユニークで重要な化合物がエバーメクチンです。

エバーメクチンとそのジヒドロ誘導体であるイベルメクチンは、大村博士の最も有名な発見の1つであることは言うまでもありません。イベルメクチンは、世界の主要な駆虫薬として人間と動物の健康のために広く用いられ、農業用途にも利用されてきました。イベルメクチンは、数百万の人々を失明と障害から救い、今後も糞線虫症や疥癬症などへの適用拡大で新たに数百万の人々を救うことが期待されています。現在、世界保健機関(WHO)は、主にイベルメクチンを使ったオンコセルカ症とリンパ系フィラリア症の制圧プログラムを実施しており、いずれのプログラムでも目標達成が間近になっています。

大村博士の研究室で発見された天然物の全リストには大きな感銘を受けます。さらに、大村博士の研究が他の研究者の着想の源になったという側面も重要です。博士の研究は有機合成化学の分野に刺激を与え、化学、生物学、医学の分野においても新たな原理の発見や理論の創出の機会をもたらしたからです。

大村博士の研究のインパクトは、抗生物質の分野を超えて科学界全体に広がっているのです。

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The Journal of Antibiotics ISSN: 0021-8820(Print) EISSN: 1881-1469(online)
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