HIGHLIGHTS

1ビットの振動

1959年、後藤英一によって、励起した調和振動子の位相を用いて、0°と180°の位相を論理「0」と論理「1」に対応させることによって、情報を記録したり処理したりできることが提案された。この後藤の発想から、発振回路をベースとするコンピューターの開発が成功した。しかしその後、半導体を利用したより高速でより効率的なコンピューターが出現したため、やがてこの概念は過去のものとなった。

ほぼ50年後、I Mahboobと山口浩司は、このアイデアに再び着目した。しかし彼らは、電子発振器を使用する代わりに、吊るしたマイクロメートルスケールのガリウムヒ素の梁からなる機械振動子を使用した。彼らは、圧電効果を利用して(表面に多くの金電極を有する)この梁の共鳴振動を駆動し、測定し、調整することによって、意のままに梁の振動の位相を180°切り替えられることを示した。

Mahboobと山口は、大きさをナノメートルスケールに小さくすれば、従来のシリコン・エレクトロニクスと比べて少ない電力で同程度の演算速度をもつメモリセルを実現できる可能性があると考えている。

非ホロノミックリッチフロー

G Ricci-Curbastroは、おそらくたった一度だけ、Ricciという名前で研究を発表したことがある。それは1900年のことであったが、「Méthodes de calcul différentiel absolu et leurs applications(絶対微分学の方法とその応用)」と題したその論文は、彼の教え子であるT Levi-Civitaとの共同執筆であり、テンソル解析の先駆的な研究となった。この計算法は、アインシュタインの一般相対性理論でも使用されている。

Ricci-Curbastroを略した呼び名は今でも使われており、「リッチフロー」は彼の研究から生まれた数学的手法に与えられた名前である。この手法は、G Perelmanのポアンカレ予想の証明における中心的要素として、広く知られるようになった。

S VacaruはPerelmanの研究をさらに進め、幾何学的な対象を超えて、リッチフロー理論を一般化した方法で物理学の領域へ入った。Vacaruは、これらのいわゆる非ホロノミックリッチフローをテーマにした2番目の論文で、アインシュタイン重力やラグランジュ力学などの物理的問題に取り組む際に、この理論がどのように適用できるかを示した。

糊とひも

量子色力学では、グルーオンの自己結合によって、グルーボールと呼ばれる多数のグルーオンが結びついた状態が生み出される。最も軽いグルーボールは、量子数JPC=0++のスカラー状態であるはずで、f0(1500)と呼ばれる粒子(1,500 MeVの質量をもつことに由来)は、必要条件を満たすように思われる。f0(1500)は、2つの光子との結合の証拠を示さないことなど、グルーボールのほぼすべての性質を示してはいるが、これや他の候補がグルーボールであるという決定的な証拠はない。

橋本幸士らは「ホログラフィックQCD」を使用して、つまりひも理論のAdS/CFT対応をQCDに導入して、グルーボールの問題に取り組んだ。この(ゲージ理論と重力理論の間の)対応は、f0(1500)が占める扱いにくい質量領域の計算に有効であり、グルーボールの質量スペクトルだけでなく、グルーボールと、パイ中間子などの他の粒子の結合も解明できた。

橋本らは、ホログラフィックQCDではf0(1500)の4つの中性パイ中間子への崩壊が抑制され、2つの光子との結合は1次で消滅し、これらすべてが既存の実験データと一致することを示した。

第4の要素

共振電子回路の構築は簡単である。インダクターとコンデンサーとレジスター(抵抗)を接続するだけで、LCR回路はできあがる。しかし、それだけで話は終わらない。L Chuaは1971年、対称性の考察に基づき、磁束の変化と電荷の変化に関係する第4の基本要素があると提案した。彼はこの新たな要素に、「メモリー・レジスター(memory resistor)」を略して「メムリスター(memristor)」と名付け、他の3つの要素を使用するだけでは実現できない機能を回路に与えられることを実証した。しかし、興味深い特性が理論的に予想されたにもかかわらず、メムリスティブ(memristive)な系は現実には実現しなかった。

D Strukovらは、このギャップを埋めた。彼らは、完全なメムリスターとして機能する2端子電気デバイスのモデルを報告し、メムリスタンス(memristance)がさまざまなナノスケールの系で極めて自然に現れることを示した。このような知見によって、これまでに多く報告された電流-電圧異常を説明でき、例えば、超高密度メモリーや学習ネットワーク用の、より進んだ集積回路の設計基盤が得られるかもしれない、とStrukovらは述べている。

量子透過性

微細構造定数αは、電磁力の強さを表すもので、もともと水素のスペクトル線の分裂を説明するために導入されたが、現在では光の速度や電子の電荷と同様に、宇宙のふるまいにとって必須のものと考えられている。微細構造定数を測定する最も直接的な方法の1つは、量子ホール効果を使用することである。今回R Nairらは、グラフェンの光透過率を使用する別の方法を報告した。

この測定方法は、電荷担体の相対論的な性質の結果、グラフェンの交流導電率は周波数に依存せずe2/4hに等しいという最近の予測に基づいている。これは、グラフェン単層の光透過率が1−παと等しいことを示唆している。穴の開いた金属スカフォードに吊るしたグラフェンシートから得られた可視スペクトルにより、0.1%の精度でこれが確認された。また、多層シートでは層を加えるごとに透過率が一貫してπα(=2.3%)ずつ低下することを、Nairらは明らかにした。


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