HIGHLIGHTS
有機低分子の結晶構造予測
有機低分子の分子構造がわかったからといって、その分子が作る結晶の構造が決定されるわけではない。しかし、M Neumannらが開発した数値的手法によってその目標が近づいた。
Neumannらは、ケンブリッジ結晶学データセンターが昨年主催した第4回「結晶構造予測ブラインドテスト」の勝者となった。このテストでは、分子図を与えられてから6カ月以内に4つの化合物の結晶構造を計算する必要があった。分子ごとに3つの予測を提出することができ、Neumannらは、約28万CPU時間を費やして、4つの構造すべてを正確に計算した。
2004年に開催された前回のブラインドテストでの結果が、あらゆる「ブラインド」分子について提出された全予測のうち、予測に成功したのは1つのみと地味なものであったため、この功績はとりわけ注目に値するものである。医学的に興味深い分子の多くが結晶化して複数の構造を形成するため、特に製薬業界は信頼できる結晶構造予測法から恩恵を受けると予想される。
実験室の事象の地平線
光子は一度ブラックホールの「事象の地平線」を超えると逃れることができない。しかし、量子力学によると、真空から粒子-反粒子対が生じることがあり、事象の地平線の外に1対のうちの片方だけが存在すれば、ホーキング放射として検出できるはずである。残念ながら、そのような放射線はいずれも、宇宙マイクロ波背景放射に比べておそらく弱いだろう。
T Philbinらは、実験室で事象の地平線を作ることにより、この問題を解決した。最初にPhilbinらは、光ファイバーでレーザーパルスを送った。各パルスは光ファイバーの屈折率nを増加させ、「増加分」の屈折率nはパルスと共に移動した。続いて、プローブパルスを送った。プローブパルスの群速度は、最初は速いがnによってパルスの速度まで減速するため、元のパルスに追いつくことはできない。プローブパルスが元のパルスの終端に「入る」ことができないため、この状況は何も入ることができない物体「ホワイトホール」に相当する。元のパルスの前端では、プローブ光がパルスより遅いためブラックホールの地平線がある。
鳥のように飛ぶ
「より大きな成果を、より少ない労力で」は、昨年亡くなった人力飛行機と太陽電池飛行機のパイオニアであるアメリカの飛行機設計者P MacCreadyのモットーだった。彼は、滑空飛行の最適化の理論的研究によっても知られている。パラグライダーやハンググライダー、セールプレーンを操縦する人々は、積極的にMacCreadyの式を応用し、暖かい空気の上昇気流による揚力を最適に利用する飛行経路を計算している。この揚力によって、省エネ上昇が可能となる。しかし、鳥類は生来MacCreadyの式を再現する能力をもっているように思われるとZ Ákosらは報告している。
Ákosらは鳥と人間の飛行法の比較研究で、飼いならされたハヤブサ(図)とコウノトリ、そして人工のグライダーに取り付けた軽量のGPS装置で収集した飛行データを詳細に調べた。大きさや空中での操縦法の違いに関係なく、鳥も人間も同様に、MacCreadyの理論によっ予測された最適条件に近い飛行パターンと滑空方法に従っていることが明らかになった。
基礎定数と重力
基礎定数は一定であると考えられている。しかし、ある宇宙モデルによると、初期宇宙では一部の基礎定数の値は今日と比べて異なり、まだ徐々に変化している可能性がある。さらに、これらの定数は重力と結合している可能性がある。
光格子時計は、原理的には微細構造定数や電子-陽子質量比などの基礎定数のドリフトや重力との結合を測定できる可能性がある。地球の軌道は楕円であるため、このような時計が受ける太陽の重力ポテンシャルは時間と共に変動する。実際、ボールダー、パリおよび東京に置かれた3つのストロンチウム時計によって、過去3年間にわたり光格子に閉じ込められた中性87Sr原子の時計遷移が測定されている。S Blattらは、他の種類の時計のデータと共にこれらのデータを分析した。その結果、現在の精度では、重力との結合はなく、基礎定数は基本的に一定であることがわかった。
ニュートリノの質量は変化するか
3種類のニュートリノが異なる質量をもっていることは、ニュートリノのフレーバーが他のフレーバーに変化するニュートリノ振動の観測結果によって確立されている。しかし、ニュートリノの質量それ自体は変化する可能性があるのだろうか。
質量の変化するニュートリノ(MaVaN)モデルでは、ニュートリノの質量がその経路中の物質の密度に依存して変化すると仮定されている。もしそうであれば、MaVaNは宇宙の膨張を加速していると思われる「ダークエネルギー」の発生源である可能性がある。
安部らは、1996~2001年の間にスーパーカミオカンデ検出器を使用して収集された大気ニュートリノのデータを分析し、MaVaNの証拠を探した。スーパーカミオカンデは50キロトンの水が入ったチェレンコフ検出器で、日本の山に埋められている。MaVaNが地球の表面、地殻、マントル、およびコア(ニュートリノは地球を通り抜けて検出器に到達できる)のさまざまな電子密度に敏感であろうことを考慮すると、ミューニュートリノのタウニュートリノへの振動については質量効果の証拠はないと考えられる。
この分析はさまざまなMaVaNモデルのすべてを否定するものではないが、いまだに「従来の」ニュートリノ振動以外の証拠はない。
