HIGHLIGHTS

きれいな気泡、マイクロポンプ、もつれの純粋化

マイクロポンプ

Swimming, diffracting, condensing

© (2006) AIP

マイクロ流体工学の分野では、さまざまな化学的・分析的応用のための(そして本号743ページで実証されているように新しい物理現象を研究するための土台として)、安価で使い捨てのプラスチックチップ上で微量液体を処理する方法を開発している。今のところ、そのようなチップの流路を通して液体を送る最も効率的な方法は外部ポンプを用いることだが、この方法では流量を制御する精度と独立性が制限される。

このような制御の方法を改善するため、丸尾昭二と井上宏之は、独立した軸によってマイクロ流路内の所定の場所に保持された連動する2個のピーナッツ型のスクリューでできたマイクロ流体ポンプが作動することを実証した(Appl. Phys. Lett. 89, 144101; 2006)。光学ピンセットを用いてスクリューの回転を駆動すると、流路に沿って流体が流れ、流体内のトレーサー粒子が回転に比例する速度で移動した。ポンプ自体が小さく単純であることから、これまで提案されていた大きく複雑な設計に対する実用的な代替案となる可能性がある。

きれいに分離しない気泡

気泡は水中のノズルから離れるとき、空気の細いくびれから分断される。蛇口の水滴もそうであるが、分断点の液体のくびれは特異点に近づく。水平の円形ノズルは、円筒対称のくびれを形成する。しかし、ノズルを0.07°程度傾けるとこの対称性は失われることを、N Keimらは薄膜上で行った一連の実験で発見した(Phys. Rev. Lett. 97, 144503; 2006)。

意外にも、気泡が離れる際のノズルの形、大きさおよび傾斜角は保存される。気泡の数および軌道も初期条件によって決定される。また、非対称性が大きい場合は、くびれはきれいに切り離されるのではなく破裂する。

Keimらは、対称性を回復させ、崩壊ダイナミクスを支配するのは表面張力ではなく、静水圧とベルヌーイ圧力であると示唆している。さらに研究すべき特異点近傍の物理がこれほどまでに多く残っているので、水の漏れる蛇口の修理にかかりきりになっている場合ではない。

細胞の環境に敏感な拡散

細胞の脂質膜におけるタンパク質の拡散は、2次元のブラウン運動の枠組みで説明できる。実験データを説明するには、モデルに膜の寸法などの効果を取り入れる必要がある。膜が固い基板に接近している場合、状況はさらに複雑になる。Y TserkovnyakとD Nelsonは、そのような状況でタンパク質拡散について適切に記述するためには、付加的な摩擦項を計算に入れなければならないと主張している(Proc. Natl Acad. Sci. USA 103, 15002-15007; 2006).

摩擦は、膜と基板の間の粘性の高い液体の層によって媒介されると考えられる。TserkovnyakとNelsonのモデルによれば、通常の条件下では摩擦力はあまり重要でない。しかし、温度が、相分離が生じる臨界値に近づくと(いかだ状の構造体がほぼ均一な脂質混合物から最初に出現するとき)、拡散係数は膜と基板の距離に大きく依存するようになる。これは、臨界に近い領域において、拡散は細胞の環境に非常に敏感であることを示しているのかもしれない。

純粋なもつれ

空間的に離れていても2つの量子物体のふるまいには相関がある。つまり1つの粒子に起こることは、直ちに別の粒子に影響を及ぼす。この現象は量子もつれとして知られており、量子通信や量子計算などの新たに生まれつつある技術の重要な要素となる特性である。これらの応用では、一般にもつれ合ったペアが1か所で作られ、続いて構成要素が分離される。分離過程において、もつれの質、つまり後に使用するための潜在的価値は、低下する傾向がある。しかし、R Reichleらは、質の低下したもつれは再び純粋化でき、しかも少なくともその最初の有用性の一部は回復できることを示した(Nature 443, 838-841; 2006)。

Reichleらは、量子情報のキャリアとして原子イオンを使用し、少数の高純度ペアを蒸留するために低品質のもつれ合ったペアを使用する純粋化スキームを実行した。これまでの実験とは異なり、このプロトコルは非常に汎用性が高い。最も重要なことは、もつれ合ったペアが損なわれず、応用やさらなる蒸留の繰り返しが可能となることである。

赤く死せる銀河

Swimming, diffracting, condensing

NASA/CXC/W. FORMAN ET AL.

巨大銀河の星は、どちらかと言うと低質量銀河の星よりも年老いている。したがって、星の誕生を研究するにはさらに時間をさかのぼって(高赤方偏移銀河を)調べなければならない。そのような遠くにある銀河だけではなく、誕生しつつある星は、ダストとガスの崩壊する天体の中心にあり、ダストとガスは可視光を吸収している。しかし、ダストがあたたまると、少なくとも原理的には地球に届くだけの赤外線を放射する。M Kriekらは、ジェミニ天文台を用いて、星形成活動が驚くほど少ない、あるいはまったくない銀河の存在を明らかにした(Astrophys. J. 649, L71-L74; 2006)。

Kriekらは、宇宙の初期、すなわち現在の年代の約1/4~1/3に対応する高スペクトル赤方偏移(2<z<2.7)を示す20個の明るい銀河を調べた。そのうちの9個では、星の誕生の特徴である電離水素輝線がみられなかった。多数の巨大銀河で誕生率が低いことから、星の誕生がブラックホールによって抑制されている可能性がある。あるいは、ダストによって信号がさえぎられているのかもしれない。


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