HIGHLIGHTS

遊泳、回折、凝縮

遠距離場での回析を克服する

調べるために用いた光の波長より小さな物体の特徴は、回析があるため解像できない。しかし、回折限界として知られる光学におけるこの最も基本的な原理には、例外がある。回折限界は物体からある程度離れた「遠距離場」において形成された画像にのみ当てはまることは、おそらく良く知られている。したがって、プローブ(光ファイバーの末端など)を用いて光を当てた物体の極近傍の光場を走査することによって、物体の波長より小さな特徴を解像できる。これが、近接場光学顕微鏡の仕組みである。

2つのグループが、別の例外を見つけたようである(Opt.Express 14, 8247-8256; 2006およびPhys. Rev. B 74, 075103; 2006)。彼らは、半径方向の誘電率と接線方向の誘電率の符号が反対の円柱状「ハイパーレンズ」により、物体の微細な構造の情報を持つエバネッセント波を遠距離場に伝搬する波に変換することを提案している。したがって、従来の光学機器でそのような遠距離場の波を操作して、物体の構造に含まれる波長よりも小さな特徴を明らかできるかもしれない。

最も単純な量子ガス

水素は宇宙で最も豊富にある元素であるが、地球上では比較的少なく、2原子気体H2として存在し、容易に大気から逃げ出してしまう。水素原子はH2に再結合する傾向があるため、原子状水素はさらにまれである。1997年に、超流動体4Heの薄膜上に吸着した水素原子の2次元ガスにおいて「局所」ボーズ・アインシュタイン凝縮が観察された。今回J Ahokasは、固体のH2薄膜も水素原子を捕捉でき、しかも捕捉された水素原子ガスは最大2週間安定していることを示した(Phys. Rev. Lett. 97, 095301; 2006)。

150 mKでは、この捕捉された水素原子ガスの密度は1018cm-3程度である。電子スピン共鳴スペクトルにより、これらの水素原子では自由原子と比較して超微細相互作用が減少していることが確認され、原子がH2結晶内のホスト分子に代わって置換位置にあることが示唆された。

興味深いことに、最も低い2つの超微細状態の原子集団はボルツマン統計に従わず、むしろ多くの原子が基底状態を占める。これがボーズ・アインシュタイン凝縮かどうかは、さらに研究を行って確認する予定である。

バクテリアの遊泳チーム

Swimming, diffracting, condensing

L. STANNARD/SPL

集光レーザービームを使用して誘電体を操作する光学ピンセットは、小さな物を精密に制御する必要があるさまざまな分野において強力なツールとなっている。S Chattopadhyayらは、光学ピンセットを使用して大腸菌の遊泳効率を決定する方法を報告した(Proc. Natl Acad. Sci. USA 103, 13712-13717; 2006)。

大腸菌(写真)は、鞭毛(数ミクロンの糸のように伸びたもので、およそ100 Hzで回転しながら螺旋形のプロペラの役割を果たす)を使用して動き回る。Chattopadhyayらは、光学トラップ中に1個のバクテリアを捕獲し、バクテリアが遊泳するように外部の流れを変えることによって、鞭毛を駆動するトルクと力をプロペラの速度と関係づけることができた。これらの特性は、ほかの方法では測定するのがむずかしく、バクテリアの推進力に対する貴重な情報が得られる。数百個のバクテリアについて平均した結果は、理論モデルによく一致した。しかし、同一のコロニーで生まれ長さもほぼ同じ個体群でも、個体間で大きな変動がみられた。

不可逆反応のリアルタイムモニタリング

Swimming, diffracting, condensing

リアルタイムで化学反応をモニターするための取り組みから、無数の連続レーザーパルスを使用するフェムト秒分光法が生み出された。しかし、試料の劣化と同様に反応生成物もしばしば障害となった。これに対処するため、P PoulinおよびK Nelsonは、1つのレーザーパルスを用い、空間勾配(各々20段からなる2つの直交するガラスのエシェロン構造)を適用して時間遅延を導入し、時間をずらして多数のパルスを試料にあてた(Science doi:10.1126/science.1127826; 2006)。このようにして、単一のポンプレーザーパルスから400個のプローブパルスを、25フェムト秒の相対遅れで試料に到達させた。

この方法は、不可逆反応つまり破局的な反応に特に有用である。P PoulinおよびK Nelsonは、異なる格子環境に三ヨウ化物(I3-)を含む3つの分子結晶を調べて、それを実証した。光を吸収すると、I3-は、結合したI2-と中性のIに解離する。各レーザーパルスがそれぞれ結晶の新しい領域をサンプリングするため、変色は次のパルスに影響しない。また、I3-吸収による干渉に影響されないI2-吸収スペクトルは、反応力学に対する結晶格子効果の明らかな証拠である。

励起子ポラリトンのボーズ・アインシュタイン凝縮

ボーズ粒子が非常に遅く、ドブロイ波長が粒子間の距離と同程度になると、ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)が起こる。物質のこの状態は、多数の粒子が最も低い量子状態を占め、巨視的なスケールの粒子間コヒーレンスが生じることが特徴である。これは、1μK以下の温度の希薄な原子ガスで観察されることがよく知られている。今回、J Kasprzakらは、数Kの温度で固体系が示すBECの顕著な特徴について報告している(Nature 443, 409-414; 2006)。

この凝縮体は、いわゆる励起子ポラリトンで形成されている。励起子ポラリトンは、部分的に物質であり光でもあるボーズ準粒子であって、半導体(励起子)内の電子励起と光学的微小空洞内の光子との強結合によって生成される。励起子ポラリトンの質量は自由電子の1/10,000であり、これによって、ボーズ・アインシュタイン凝縮が生じるための温度および密度の条件が大幅に緩和される。したがって、この系では粒子密度を上げることによって液体ヘリウムより高い温度で基底状態の顕著な占有(写真)を観察できる可能性がある。


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