Nature Physics Research Highlights

ドリフトを抑える

装置を正しく較正し、系統的誤差を把握し、ノイズを減らすために適切な平均法を実施したにもかかわらず、温度がドリフトすると、それに合わせて信号がドリフトする。そんなことが起こったら、誰でも苛立ちを覚えるに違いない。多くの実験において、実験条件がゆっくりと変化するために測定機器にドリフトが生じ、達成可能な測定精度が制限される。しかしV Yashchukは、このような誤差を効果的に抑制するのに役立つ、一般的な手法を提案している。

その基本的なアイデアは、信号をスキャンする方向か、(可能ならば)記録した量の正負符号を繰り返し反転させることによってドリフトを打ち消すというものである。いずれの方法でも、ドリフトの時間依存性と反相関するように反転シーケンスを設定すると、ドリフトの影響は平均化される。

当然、肝心なのは、正しい反転シーケンスを見いだすことである。Yashchukは、特定の多項式次数のドリフト誤差を抑制する最適な測定計画の分析的表現と、特定の実験における最適なスキャンシーケンスを見いだす帰納的規則について述べている。

ナノとラマンのランデブー

ラマン分光法は、物体の化学組成と構造を決定する強力な技術である。残念ながら、その基盤となっている散乱過程は弱い。そのため、有用なラマン信号を得るには、容積の大きな試料か強力なレーザープローブのいずれかが必要となることが多い。

しかし、金属の鋭いティップにレーザーを照射すると、表面プラズモンポラリトンが励起されることによりティップ周囲の光場が著しく増強され、その結果、ティップの近くにある表面からのラマン信号が強くなることも明らかになっている。このティップを用いて表面全体をスキャンすれば、表面の化学組成のマップを構築できる。

De Angelisらはこのアイデアを拡張し、その基本分解能の限界に迫っている。彼らは、金属ティップの表面プラズモンポラリトンを直接励起する代わりに、ティップをレーザー励起フォトニック結晶共振器の中央に設置することにより、表面プラズモンポラリトンを金属ティップに送り込んでいる。これにより背景レーザー場が大幅に弱まり、ティップでのコントラストが大きくなって、7 nmの空間分解能が達成された。さらに、原子間力顕微鏡のカンチレバーにこのティップ構造体を作製することにより、表面の化学組成と形状を同時にマッピングすることができた。

立証済み

量子重力理論の究極の目標は、量子力学と一般相対性理論という、大成功をおさめている2つの理論を統一することである。これらの理論は自己回避的で、量子力学は重力を無視し、一般相対性理論は量子効果を無視している。しかし、例えば約10−35 m(つまりエネルギーEPlanck約1019 GeV)のプランクスケールのような微小な長さスケールでは、量子効果が時空の性質に影響を与える可能性がある。実際、このような条件下でもローレンツ不変性が保たれるのか、という疑問は当然である。

何十年もの間、このようなエネルギースケールで厳密な実験室での検証を行うことはできなかった。そのため一部からは、上記のような「万物理論」の科学的根拠に対する疑問が投げかけられてきた。しかし幸運にも、宇宙論的距離で発生した高エネルギーγ線バーストにより、プランクスケールでのローレンツ不変性の妥当性を検証できる。

A Abdoらは、2009年5月10日に発生した短時間のγ線バースト(31 GeVの光子が含まれる)の特性を分析したが、ローレンツ不変性の破れを示す証拠を得ることはできなかった。ある理論では、量子ゆらぎによって伝搬粒子はそのエネルギーに応じて異なる挙動を示す、と仮定されている。1.2 EPlanck以下では、光速が光子エネルギーに比例して変化することはない、とAbdoらは確信している。

予測可能な選択

人間には気まぐれな性質があるため、個人の行動を予測するのは難しいのかもしれない。しかし、個人が大勢集まった集団で選択の平均をとると、確率論的な法則に従っていることが明らかになることが多い。今回、チェスの最初の数手で行われる判断について、このアイデアが適用された。

チェスのプレイヤーは、多いけれども限りのある可能な指し手の組み合わせの中から、次の行動を選択できる。したがってチェスは、意思決定に関するケーススタディーとして興味深い。推算では、指し手の順序は約10120通りあるとされているが、経験豊かなプレイヤーは、最初の数手をほんの一握りの指し手の中から選択する傾向がある。

ジップの法則によれば、ある行動が行われる頻度は、その度数分布表の順位に反比例するとされている。B Blasiusらは、チェスに関する膨大なデータベースの分析を行った。その結果、チェスの最初の数手の度数分布がべき乗則に従い、べき指数がゲームの進行に合わせて線形に増加することを発見した。

この研究のおかげで誰もがチェスの名人になれるということはないだろうが、集団の意思決定に関する理解が進めば、例えば、株式市場の動向の予測などに大きな影響を与えると考えられる。

宇宙の減速

超新星の観測から明らかなように、宇宙の膨張速度は加速し続けており、その説明としてダークエネルギーが仮定されている。しかしA Shafielooらは、実際には現在この加速度が減少している可能性があるのではないか、と考えている。

ダークエネルギーの状態方程式(その圧力とエネルギー密度の比)は一定であると想定されることが多い。しかし、Shafielooらはそのような想定をせずに、増え続ける最近の宇宙の歴史に関連するデータを分析した。

Shafielooらは、赤方変位0.015~1.551の間にある数百個のタイプ1a超新星からなる「構成セット」、バリオン音響振動、宇宙マイクロ波背景放射に関するデータを用いて、標準的な分析における前提を修正する根拠を見いだした。特に超新星のデータは、赤方変位の値が小さい場合にダークエネルギーがいくらか変化していることを示唆している、と彼らは結論している。

これについては、データセットの系統分類の誤解であるというような、ありがちな説明も可能であろう。しかしShafielooらは、さらにデータを収集し、有力なモデルに対するこのような「小さな挑戦」を受け入れるよう主張している。

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