ナノテクノロジー:事実と数字

「ナノテクノロジー」という言葉が科学論文のタイトルに用いられたのは、谷口紀男(東京大学)の1974年の論文が最初でした。この言葉が頻繁に使われるようになったのは、1980年代後半になってからのことで、それからは、使用例は増え続けています。

2005年には、「nano」という接頭辞を含む論文の数が27,000本を超えました(ISIのWeb of Scienceによる)。論文は、NatureやScienceを始め、Journal of the American Chemical Society、Applied Physics Letters、Cancer Gene Therapyといったさまざまなジャーナル誌に発表されています。このような多様性は、ナノサイエンスとナノテクノロジーの多面的な性格を反映するものですが、この分野を専門とした学際的ジャーナル誌が、研究に役立つことも示唆しています。

1990年代後半までは、ナノ関連の論文の発表数は、東アジア、ヨーロッパ、米国が肩を並べていましたが、現在では東アジアが明らかにトップを走っており、米国が2位(図1参照)となっています。アジアの中では、2001年に中国が日本を論文数で追い越し、韓国も成長が著しく、2003年には発表論文数で英国を追い越しました。


図1: 地域別ナノテクノロジー関連論文数

ナノテクノロジーに関する論文の数が増えてきているように、ナノテクノロジー研究に対する予算も世界的に増えてきています。全米科学財団の推計によれば、 2005年の各国政府のナノテクノロジー関連の研究開発投資額は、総額で41億ドル(約4,700億円)となりました。その額は、1997年には、4億 3,200万ドル(約500億円)、2001年は15億ドル(約1,700億円)でした。

企業も多額の投資をしてきており、Lux Research社の調査によれば、2004年の企業のナノテクノロジーに対する投資額は38億ドル(約4,400億円)でした。米国企業による投資が最も多く、17億ドル(約1,900億円)で、次いでアジアの14億ドル(約1,600億円)、ヨーロッパの6億5,000万ドル(約750億円)となりました。

ナノテクノロジーの講義を設定する大学の数も急速に増えてきています。当初、このような講義は、ほとんどが大学院生向けでしたが、初めての学部学生向けの講義が開設されています。ヴュルツブルク大学(ドイツ)とチュラロンコン大学(タイ)などでは、ナノテクノロジーの学位を創設しており、他の大学もこれに追随することは確実です。

Natureとナノテクノロジー

ナノテクノロジーに関する数多くの先駆的な論文(例えばバックミンスターフラーレンの発見やカーボンナノチューブの作製)は、Natureで発表されました(「Natureで発表されたナノテクノロジー関連の重要論文」参照)。ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の他のジャーナル誌、特にNature BiotechnologyNature Materialsでも、ナノテクノロジーに関して大きな影響力のあった論文が発表されており、これからも発表し続けていきます。

ナノテクノロジーに関する論文の数が世界的に増えていることから、NPGでは、選りすぐったナノテクノロジー研究論文を掲載する新たなジャーナル誌の創刊の機が熟したと確信するに至りました。このジャーナル誌には、化学、物理学、材料、工学、生命科学の各分野に関する論文が掲載され、レビュー論文、 news and views、 Commentary、Analysisによって、紙面の充実が図られます。それがNature Nanotechnologyなのです。

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