高度膀胱瘤および関連する欠損の経膣的側方腟修復術のための新手法
原論文
Rodriguez LV et al. (2005) Transvaginal paravaginal repair of high-grade cystocele and lateral defects with concomitant suburethral sling: report of early results, outcomes, and patient satisfaction with a new technique. Urology 66: 57–65
PRACTICE POINT(診療のポイント)
この経膣的手法は、合成メッシュを使用して区画前部脱を修復し、腹圧性尿失禁を治療・予防する有用かつ効果的な手法である。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
高度膀胱瘤は、中央および側方の欠損、尿道の過剰運動性ならびに膣円蓋脱などの一群の解剖学的異常と関連している。外科的修復の目的は、これらの解剖学的欠損を矯正し、正常な腸および膀胱の機能を回復させることである。
OBJECTIVES(目的)
高度膀胱瘤および関連する欠損を修復するための新たな経膣的側方腟修復術(尿道下スリングの同時設置を含む)の初期的な結果を報告すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
この前向き研究は、性器脱定量化(POP-Q)システムに基づきステージIII~IVに分類される膀胱瘤を有する女性を対象として、2002年5月から2003年8月にかけて実施された。患者は手術前にPOP-Qシステム、ビデオウロダイナミクス、ダイナミック骨盤MRIおよび、尿症状に関する標準的な質問票を用いて評価された。膀胱瘤の修復に先立ち、すべての患者に対して1 cm×10 cmの軟らかいポリプロピレン製メッシュを使った遠位尿道ポリプロピレンスリング処置を施した。膀胱瘤修復のため、まず、膀胱頸と膣の袖口のあいだの正中に切開が行われた。中央の欠損は、正中膀胱周囲筋膜の褶壁形成によって矯正された。それから挙下筋閉鎖筋膜の側方、仙骨子宮/基靱帯の近位、尿道周囲筋膜の遠位に5cm×5cmの軟らかいポリプロピレン製の円形メッシュを固定することによって、側方欠損の側方腟修復が行われた。そして、過剰な膣前壁を切除した後、切開部が閉じられた。術後のフォローアップ評価は、最初の1年は3カ月ごとに、その後は6カ月ごとに行われた。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
結果はPOP-Qシステムと尿症状に関する質問票を使って評価した。
RESULTS(結果)
本研究では平均年齢65歳(40~86歳の範囲)の女性98例が対象とされた。膣式子宮摘出術、腸瘤修復および直腸瘤修復がそれぞれ26%、45%および94%の患者で同時に実施された。術中の合併症が2例の患者(2%)で生じた。術後のPOP-Qスコアは、それぞれ85%、13%および2%の患者においてステージ0~I、IIおよびIIIの膣前壁脱を示していた。側方欠損の再発のために3例の患者(3%)で2度目の膀胱瘤修復が必要であった。術後尿閉の症例はみられなかった。新規の腹圧性尿失禁(SUI)が3例の患者(3%)で生じ、また、3例の患者(3%)で新規の切迫尿失禁が生じた。術前にSUIを患っていた54例の患者(55%)のうち70%が完全に治癒したが、11%で重度のSUIが残った。SUI症状および切迫尿失禁を原因とする悩みの平均スコアは、それぞれベースラインの2.3から術後の0.94へ(P<0.005)、ベースラインの1.5から術後の0.44へ(P<0.005)とそれぞれ減少した。生殖泌尿器症状に関するQOLスコアは4.7から1にまで改善した(P<0.005)。全体として、患者は89%の平均改善率を報告した。
CONCLUSION(結論)
ポリプロピレン製スリングを遠位尿道に同時に配置するこの高度膀胱瘤の経膣的側方腟修復術の新手法は、解剖学的および機能的に良好な初期結果をもたらした。
COMMENTARY(解説)
Edward James Wright
Rodriguez らによるこの論文は、実用的かつ刺激的なものである。この著者たちは発展途上にある手法を用いた結果の報告において、高度性器脱(主として前区画)の経膣的修復と、顕性および潜在的なSUIの同時処置を明らかにし、提唱している。またこの研究では、女性の骨盤再建術に関して進行中の多くの議論と疑問が強調されている。
膣前壁脱の修復は多くの理由のために問題を生じ得る。側方腟欠損の術前における評価は信頼できない場合があり、身体診察や画像分析は今のところ術中評価の代わりとはならない1。このことは経腹部処置の論拠を強めるものとして用いられてきた。恥骨後隙の前面像は診断と治療の両方を可能とするためである2。経膣処置のさいには、膣側方の欠損は推論によってしか決定できない。また、腹部からのアプローチでは中央欠損膀胱瘤にアクセスすることができないが、中央および側方膣欠損の褶壁形成による経膣修復は、正中と側方の縫合固定が正反対の方向に引っ張ることになるため、両方の問題を悪化させる危険がある。同様に、前部コンパートメントの分離した修復では、尖端の脱が進行する危険がある。これらの観察に加えて、脱修復後の潜在性SUIを診断することの難しさがあり、処置の複雑さは増す一方である。
本研究において報告されている手法は、前部コンパートメントの欠損(中央膀胱瘤および側方膣欠損)と尖端支持の喪失に同時に対処するものである。広範な支持を与える代償的な合成メッシュが腱弓を修復あるいは既存の連結を強めるため、側方膣欠損の診断の不確定性は無関係となる。中央の欠損が修繕され、褶壁形成の必要性が解消され、側方膣連結に対する内側の引き寄せが軽減される。仙骨子宮靱帯へのメッシュの固定は、十分な尖端支持を確実にもたらす3。最後に、尿道下にスリングを配置することでSUIが治療あるいは予防される。解剖学的、機能的な結果、およびQOLの結果は有意なものであったが、性機能は評価されていない。合併症はまれであった。
この論文には2、3の欠点がある。この手法による結果は「初期的なもの」であり、これを考慮して結果を判断しなければならない。著者たちは患者の評価におけるダイナミック骨盤MRIの有用性について、それがあるとしても説明していない。症状と解剖学的な骨盤底欠損のあいだの相関は非常に多様で、画像分析は多くの場合、治療や結果の予測に役立たない4。術後に患者がSUIを発症する可能性があるため、著者たちはそれが指示されているか予防的であるかにかかわらず、スリングの使用が好ましいとしている。
多区画脱の経膣修復をさらに簡素化するための動きが進みつつある。套管針の配備された尿道下スリングの生成技術を借りて、同様に配備された生物学的合成メッシュのパッチを、尖端、前部および後部の欠損の複合的修復に利用することができる5。これらの手法は移植材料の縫合固定の必要性をなくし、膣側方空間ならびに尿道骨盤および仙棘靱帯の側面を通過するさいの困難を大幅に減らしてくれる。報告されている手法は、移植片の固定を主観的で時として困難な縫合の配置に依っている。さらに、尖端を確実に十分支持するために全ての症例で腹膜が開かれるかどうかは不明である。これは長期的な成功に影響を及ぼし得るが、報告されたコホートでは明らかにされていない。
このようなストラテジーが汎用的パラダイムにまで発展するかどうかは、まだ不明である。また、ポリプロピレンを使った修復の長期的な結果も不確定である。これらの疑問に答えるのを助けてくれるような前向き無作為化試験のデータは、今日までほとんど得られていない。とはいえ、Rodriguezらが報告した手法とその結果は、括約筋の障害に同時に対処することの可能な、広範な脱出症のための信頼のおける経膣的修復を我々の身近にもたらしてくれるものであると言えよう。
References
- Segal JL et al. (2004) Paravaginal defects: prevalence and accuracy of preoperative detection. Int Urogynecol J Pelvic Floor Dysfunct 15: 378–383 | PubMed |
- Maher C and Baessler K (2005) Surgical management of anterior vaginal wall prolapse: an evidence-based literature review. Int Urogynecol J Pelvic Floor Dysfunct [doi: 10.1007/s00192-005-1296-3] | Article |
- Flynn BJ and Webster GD (2002) Surgical management of the apical vaginal defect. Curr Opin Urol 12: 353–358 | Article | PubMed |
- Ellerkmann RM et al. (2001) Correlation of symptoms with location and severity of pelvic organ prolapse. Am J Obstet Gynecol 185: 1332–1337 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Collinet P et al. (2005) Transvaginal mesh technique for pelvic organ prolapse repair: mesh exposure management and risk factors. Int Urogynecol J Pelvic Floor Dysfunct [doi: 10.1007/s00192-005-0003-8] | Article |
