胚細胞癌のサルベージ療法における大量化学療法:次はどこへ行くのか?
原論文
Pico JL et al. (2005) A randomised trial of high-dose chemotherapy in the salvage treatment of patients failing first-line platinum chemotherapy for advanced germ cell tumours. Ann Oncol 16: 1152–1159
PRACTICE POINT(診療のポイント)
この無作為化第III相試験では、VIPが胚細胞癌に対する標準的なセカンドラインサルベージ療法であることが確認され、また、新たな治療法に関する第II相試験ではより早い段階で無作為化を行う必要があることが明らかにされた。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
再発性の胚細胞腫瘍を有する男性の予後は不良である。このような患者に対して、いくつかの化学療法レジメンが評価されているが、最適なサルベージ療法は依然として不明である。いくつかの研究では、用量増加がこれらの患者に奏効する可能性が示されているが、この方法は無作為試験によって検討されていない。
OBJECTIVES(目的)
サルベージ療法の用量拡大によって、難治性または再発性の胚細胞腫瘍を有する患者の転帰が改善されるかどうかを明らかにすること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
1994年2月~2001年9月に、11カ国の43施設から、この前向き無作為化第III相試験に再発性の胚細胞腫瘍を有する患者を登録した。適格患者は、16歳以上、全身状態(PS)0~2で、ファーストラインのプラチナ製剤を含む化学療法が初期に奏効した例とした。シスプラチンを含む化学療法が無効であった患者も適格とした。患者を無作為に2群に割り付け、1群には標準的なPEIまたはVEIPを21日周期で4コース施行し(標準用量群)、もう1群には標準的なPEIまたはVeIPを3コース施行後にCarboPEC大量療法を施行した(高用量群)。標準的なPEI療法とVeIP療法では、1~5日目にイホスファミド1,200mg/m2+メスナ400mg/m2+シスプラチン20mg/m2と、1~5日目にエトポシド75mg/m2(PEI)または1、2日目にビンブラスチン0.11mg/m2(VeIP)を投与した。CarboPEC大量療法としては、1日目にカルボプラチン最高550mg/m2/日と1~4日目にエトポシド450mg/m2/日+シクロホスファミド1,600mg/ m2/日+メスナ3,600mg/m2/日を投与し、7日目に造血幹細胞支持療法を施行した。4カ月ごとに2年間、患者の評価を行った。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要エンドポイントは無イベント生存期間(腫瘍増悪、再発または死亡までの期間)、副次的エンドポイントは無病生存期間(完全奏効後の再発までの期間)とした。
RESULTS(結果)
登録した患者280例中263例(標準用量群128例、高用量群135例)を解析の対象とした。治療4コース後の客観的奏効率は、標準用量群67%、高用量群75%であった(P=0.23)。全体的な完全奏効率はそれぞれ42%と43%であった。治療毒性による死亡は、標準サルベージ療法施行例の3%と大量療法施行例の7%で報告された。中央値45カ月の追跡期間後の3年無イベント生存率は、標準用量群35%、高用量群42%であった(P=0.16)。全生存に差はなかった。生存に関する唯一の有意な群間差は、完全奏効が得られた104例で認められ、大量療法施行例は非施行例と比べて3年無病生存率が高かった(75%対55%、P=0.04)。
CONCLUSION(結論)
標準用量でのサルベージ化学療法を3コース施行後に大量療法を1回施行しても、治療転帰に影響はなかった。
COMMENTARY(解説)
R Tim D Oliver
著者のPicoらは、転移性胚細胞癌に対するサルベージ化学療法に関する最大規模の無作為化試験の終了により祝福されるであろう。得られた結果―大量化学療法を併用しないVP 16-213(エトポシド)+イホスファミド+シスプラチン(VIP)が依然として標準的治療法である―は基本的に否定的なものであったにもかかわらず、この試験では、今後の試験への重要なメッセージをいくつか示している。このうちもっとも重大なのは、選択バイアスや自然経過の変化を検出するために、第II相段階での無作為化が重要であるということである。対照群の無イベント生存率36%は、1988年にLoehrerらが最初に報告した16%や、1998年に報告された30%とは際立って対照的である1。化学療法感受性例を選択したことがこの差に寄与した因子の1つであると考えられる。しかし、若年男性の精巣癌に関する認識が高まる2と同時に、すべての病期において、原発性の療法抵抗性腫瘍を有する患者でさえ、早期診断によって予後は変化しつつある。そのため、第II相サルベージ療法試験で得られた結果、たとえばエトポシドをパクリタキセルで代用する方法の正当化に用いられた無イベント生存率36%という最近の報告3などには、すべて疑問が生じ得る。
それでも、3年無イベント生存率は大量化学療法群のほうが7%優れていた(42%対35%)という結果は、より多数の患者を登録していたら、また過剰な治療関連死亡率(7%対3%)がもっと低かったら、あるいは高用量群の患者のうちプロトコールの高用量投与の部分を施行しなかった28%に実際にこれを施行していたら、有意であった可能性がある。しかし、治療は進歩し続ける。大量化学療法2コース(タンデム)と4コースの相対的価値、水平的または垂直的な用量拡大の相対的価値、あるいは水平的な用量拡大後の高用量の併用(ある研究では、このようなプロトコールによって任意抽出されたファーストライン治療無効例の60%が救済されることが報告された4)の相対的価値など、新たな論点が発生している。この後者の手法と新薬の併用、すなわちイリノテカン+パクリタキセル+オキサリプラチンと高用量トポテカンの併用(IPO/HDTc)によって、最近ではセカンドライン治療無効例の33%が救済されている5。
Picoらの試験デザインに向けられる可能性のある重大な批判の1つは、大量療法を対照群の標準的なサードライン治療に取り入れなかったということである。実際に、著者らはこの段階で何例の患者に高用量治療を施行したのかについて言及すらしていない。次世代のサルベージ療法試験は、この過ちや、大量療法による最初の治癒例が認められてから試験終了までの遅延から学ばなければならない。今後の試験では、VIPを新たな治療法、たとえばサードライン治療としてIPO/HDT、セカンドライン治療としてIPO/HDTcを併用する療法などと比較する、無作為化第II相試験を実施すべきである。試験終了後も登録を続け、その間に結果を解析し、1群に患者250例または400例を組み入れた第III相試験のどちらに進むのが適切であるかを決定すべきである。しかし、このような治療を必要とする患者は次第にまれになっていることや、金銭的制約を考えると、このような状況においてそうした試験を行うためには、革新的な低コスト手法(製薬企業の支援を受けずに、インターネットを利用して国境を超えて無作為化やデータ収集を行う方法など)を見出す必要があるであろう。
References
- Loehrer PJ Sr et al. (1998) Vinblastine plus ifosfamide plus cisplatin as initial salvage therapy in recurrent germ cell tumour. J Clin Oncol 16: 2500–2504 | PubMed | ISI | ChemPort |
- Bhardwa JM et al. (2005) Assessing the size and stage of testicular germ cell tumours: 1984–2003. BJU Int 96: 819–821 | Article | PubMed | ISI |
- Mead GM et al. (2005) A phase II trial of TIP (paclitaxel, ifosfamide and cisplatin) given as second-line (post-BEP) salvage chemotherapy for patients with metastatic germ cell cancer: a medical research council trial. Br J Cancer 93: 178–184 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Shamash J et al. (1999) Sixty percent salvage rate for germ-cell tumours using sequential m-BOP, surgery and ifosfamide-based chemotherapy. Ann Oncol 10: 685–692 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Shamash J et al. (2005) A phase II study of irinotecan, paclitaxel and oxaliplatin (IPO) in patients with multiply relapsed germ cell tumours (GCT) [abstract]. J Clin Oncol 23 (Suppl): 4527
