Practice Point

抗シトルリン化蛋白抗体:最適な検査法はどれか?

原論文

Original article Vander Cruyssen B et al. (2006) Diagnostic value of anti-human citrullunated fibrinogen ELISA and comparison with four other anti-citrullinated protein assays. Arthritis Res Ther 8: R122

PRACTICE POINT(診療のポイント)

anti-CCP2測定は初期関節炎、特にundifferentiated arthritisの患者を診断するうえで有効である。また、抗CCP抗体の有無は、慢性疾患および関節破壊の予後予測マーカーである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

関節リウマチ(RA)において、その臨床症状をすべて発症していない患者においても、リウマトイド因子(RF)などを初めとするいくつかの自己抗体が出現していることが知られている。残念なことに、リウマトイド因子はRAに罹患していない人にも検出されることがあるため、RFを指標とする検査の特異度は限定されている。一方で、それに比して抗シトルリン化蛋白/ペプチド抗体(ACPA)の有無は、RAに対する特異度が顕著に勝ることが証明されている。したがって、ACPAを検出し、RAをできる限り早期に診断する、信頼できる血清診断法の同定が必要不可欠である。

OBJECTIVES(目的)

本研究の目的は、RA診断法としての、抗ヒトシトルリン化フィブリノゲン抗体(AhFibA)を指標とする酵素免疫測定法(ELISA)の有効性を検討すること、およびRA患者のコホートにおいて、5つの異なるACPA検査につき、RF検出における一致の程度を比較検討することであった。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

本研究では、2つの異なった患者集団を対象とした。リウマチ性疾患の症状を呈する患者から成る1群では、AhFibA ELISAの診断効果を検討した。さらに、AhFibA ELISA を受診者動作特性(ROC)曲線分析によって、環状シトルリン化ペプチド(CCP)2抗体を指標とする検査法と比較検討した。血清サンプルについてACPAの測定を行い、患者の症状をアメリカリウマチ学会(ACR)の分類基準に従って分類した。2群は、罹病期間が4年を超える長期RA患者で構成され、この群ではAhFibA ELISAの診断効果を、RF検査、抗ペプチドAおよび抗ペプチドB抗体による免疫測定、anti-CCP1およびanti-CCP2によるELISAとそれぞれ比較検討した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

本試験の主要評価項目は、AhFibA ELISAを用いた、1群におけるRAの正確な診断とした。副次的評価項目は、2群での、他のACPA測定と比較したAhFibA ELISAのRA診断における有効性とした。

RESULTS(結果)

1群には、合計1,024例の患者が登録された。うち92例がRAと診断され、463例が非RA患者に分類された。カットオフ値を、提唱されている吸光度≧0.12に設定した場合のELISAの感度は60.9%、特異度は98.7%であった。AhFibA ELISAとanti-CCP2測定の診断能に、有意差は認められなかった。2群には、RAと診断された合計180例の患者が登録された。この群で5つの検査法の診断効果を比較検討したところ、抗ペプチドA、抗ペプチドB、anti-CCP1測定から成るグループ1と、AhFibA ELISAとanti-CCP2測定からなるグループ2の、2つの検査法群で、判定結果の群内一致が認められた。

CONCLUSION(結論)

AhFibA ELISAとanti-CCP2測定は同等の診断能を有する。ただし、ACPA検査間で、判定結果が一致しない場合がある。

KEYWORDS(キーワード)

抗体シトルリン化蛋白診断ELISA関節リウマチ

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COMMENTARY(解説)

Jacob M van Laar

1990年代後半に、RA患者血清中のACPAについて同定と解析が進められたことで、RAの病態形成に関する研究は新たな時代を迎えた1。ACPAは、フィラグリン、ビメンチン、フィブリンなどの、ペプチジルアルギニンデイミナーゼによって触媒される翻訳後修飾反応によってシトルリンに変化し得るアルギニン残基を有する、様々な蛋白を抗原とする。これまでに、ACPAを検出する様々な方法が開発された。最近では、RA血清とCCPを含む、ライブラリから選択された環状ペプチドを指標にスクリーニングを行うELISAキットが製品化されている。

患者の血清における検出可能な抗CCP抗体濃度は、RAの臨床病態に年単位で先行することが証明されている2。疫学的には、患者の血清における抗CCP抗体の存在は、破壊性の疾患、喫煙と関連性が示されており、最近その病理的関連性がマウスのコラーゲン誘発関節炎で証明されている3。免疫後間もなく認められる抗II型コラーゲン抗体および抗CCP抗体両方の出現は、臨床症状に先行した。抗CCP抗体は、ラット食道組織のシトルリン化フィラグリン、およびシトルリン化フィブリノゲンに対して特異性を示した。シトルリン化フィブリノゲンに特異的なマウスモノクローナル抗体は、準最大量の抗II型コラーゲン抗体と同時投与した場合に関節炎を増悪させ、炎症を起こしている滑膜内で標的を結合した。

RA患者では、滑膜組織にペプチジルアルギニンデイミナーゼおよびフィブリンが存在していることから、フィブリンが標的抗原であることが考えられる。RA患者およびundifferentiated arthritis患者の初期関節炎コホートで、シトルリン化フィブリノゲンを用いて、脱イミノ化されたフィブリノゲンに対する血清中の抗体を検出した最近の研究で、この点がさらに補強されている4

Vander Cruyssenらによる本研究では、特異度を≧98%に設定したときのAhFibA ELISAの感度は抗CCP抗体に対する検査と同程度(60~70%)であったが、IgM-RF測定(16~24%)よりも顕著に優れていることが示された。また、両検査ともX線造影によって評価した進行度の予測因子として有効であった。本研究のこれらの結果は、AhFibA ELISAの診断価値を確認するものである。RA患者では、AhFibA ELISAとanti-CCP2測定の判定結果はよく一致し、感度および特異度について同等の検査特性を示した。他の疾患に罹患している患者で使用した場合には、このような結果は得られなかった。著者らは、この結果をAhFibA ELISAおよびanti-CCP2測定が共に、ACPAの検出に複数のシトルリン化されたエピトープを利用していることによるものとしている。著者らは、ACPAおよびRFを指標とした従来の検査に対する、anti-CCP2測定およびAhFibA ELISAの優位性を示す説得力のあるエビデンスを提供している。著者らが指摘する通り、RAについてこれ以上の感度を有する新しい検査を開発できるかは疑問である。anti-CCP2測定およびAhFibA ELISAは、どちらも確立されたRAにおいて、同じくうまく機能するようである。AhFibA ELISAがin-houseな検査であるのに対し、anti-CCP2測定は製品化されており、臨床の場で広範に使用されている。

したがって、臨床での日常的な使用において、AhFibA ELISAがanti-CCP2測定に取って代わることは考えにくいが、標的抗原が明らかであることから、科学的な用途における価値は有する。

anti-CCP2測定は、初期の関節炎患者、特にundifferentiated arthritisの診断に有効であることが証明された。また、抗CCP抗体の有無は、慢性疾患および関節破壊の予後予測マーカーであることが証明された。RAの可能性がある患者でのPROMPT(Probable Rheumatoid Arthritis: Methotrexate Versus Placebo Treatment)試験5では、抗CCP抗体陽性の患者でのみ、メトトレキサートによる治療の治療効果があることが証明された。これは、本検査の臨床における意義を強調する結果である。

References

  1. Schellekens GA et al. (1998) Citrulline is an essential constituent of antigenic determinants recognized by rheumatoid arthritis-specific autoantibodies. J Clin Invest 101: 273–281 | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Nielen MM et al. (2004) Specific autoantibodies precede the symptoms of rheumatoid arthritis: a study of serial measurements in blood donors. Arthritis Rheum 50: 380–386 | Article | PubMed | ISI |
  3. Kuhn KA et al. (2006) Antibodies against citrullinated proteins enhance tissue injury in experimental autoimmune arthritis. J Clin Invest 116: 961–973 | Article | PubMed | ChemPort |
  4. Nielen MM et al. (2005) Antibodies to citrullinated human fibrinogen (ACF) have diagnostic and prognostic value in early arthritis. Ann Rheum Dis 64: 1199–1204 | Article | PubMed | ChemPort |
  5. van Dongen H et al. (2006) Probable rheumatoid arthritis methotrexate versus placebo therapy (PROMPT)-study: indications for a window of opportunity in the treatment of patients with undifferentiated arthritis [abstract]. Ann Rheum Dis 65 (Suppl 2): 54

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