Practice Point

変形性膝関節症における理学療法とヒアルロナン系薬剤の比較

原論文

Atamaz F et al. (2006) A comparison of two different intra-articular hyaluronan drugs and physical therapy in the management of knee osteoarthritis. Rheumatol Int 26: 873–878

PRACTICE POINT(診療のポイント)

膝の変形性関節症の治療におけるヒアルロナンと理学療法の有用性を決定するためには、それらをプラセボもしくはNSAIDと比較した証拠がさらに必要である。

Top

SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

膝の変形性関節症(OA)は、膝のあらゆる部分の関節軟骨を破壊する進行性のリウマチ性疾患である。膝のOA患者における疼痛と障害を抑える際には、鎮痛剤、NSAID、関節内注入、物理的措置および外科手術など、多くの治療法が使用されている。

OBJECTIVES(目的)

この研究では、膝の変形性関節症の治療におけるヒアルロン酸ナトリウムとhylan G-F 20という2種類のヒアルロナン治療と理学療法の効能とを比較することが主な目的とされた。また、二次的な目的として、2つのヒアルロナン系薬剤の効果が比較された。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

この研究では無作為化単純盲研が実施された。米国リウマチ学会の膝OA基準を満たしており、Kellgren–Lawrenceスケールでグレード2または3が割り当てられ、かつ、6カ月以上の有病期間を有する40~80歳の患者が研究の対象とされた。膝の患部を治療するために直近の6カ月以内に関節内注入または理学療法を受けていた患者は試験群から除外された。患者の評価は研究の開始時と6カ月後に再度行われた。また、患者の評価はWOMAC骨関節炎インデックス(Western Ontario and McMaster University Osteoarthritis Index)とShort Form 36 Health Surveyを使っても行われた。患者の評価は1、3、6、9および12カ月目に行われた。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

この研究では、両膝の関節可動域、15m歩行時間、軟部組織腫脹と滑液滲出、100mm視覚的アナログスケールで測定した日中の自発痛、夜間痛、安静時痛、運動痛、および4点スコアリングシステムを使った触覚痛などが評価項目とされた。

RESULTS(結果)

本研究には合計80例の患者が参加した。臨床的および放射線学的に確認された膝OAの患者に対して、ヒアルロン酸ナトリウムもしくはhylan G-F 20の関節内注入(週1会を3週間と6カ月後に再度)、または理学療法による介入が無作為に割り当てられた。物理療法による治療には赤外線、パルス状短波ジアテルミーと干渉低周波による週5回、3週間の治療が含められた。これらの処置は各々20秒間、合計1時間続けられた。全体として、関節可動域とWOMACスコアの変化は群間で有意に異ならなかった。両群において15m歩行時間、総WOMACスコア、日中の自発痛、夜間痛、運動痛およびShort Form 36 Health Surveyに有意な改善が観察された。サブグループ解析は2つのヒアルロナン系薬剤の効能に差がないことを示した。治療に関連する重篤な有害事象は報告されていない。

CONCLUSION(結論)

理学療法は、膝OA患者における症状とQOLの改善において、いずれのヒアルロナン系薬剤とも同等に有効であった。

KEYWORDS(キーワード)

ヒアルロナン骨関節炎理学療法

Top

COMMENTARY(解説)

Jonathan Samuels* & Steven B Abramson

膝の変形性関節症(OA)は、臨床において医師が遭遇する最も一般的な関節炎の1つである。膝OAの非外科的治療は今のところ有効性が限られており、NSAIDの場合のように胃腸や心血管の有害事象のリスクを高めることが示されている1

Atamazらによるこの報告は、限定的な単純盲検ではあるものの、2種類のヒアルロナン関節内注入薬と理学療法による介入の効能をそれぞれ比較した刺激的な研究である。著者らは症候性OAの治療について、理学療法が関節内ヒアルロナンと同じくらい効果的であることを示唆する証拠を提示しているが、最近Pakerらも同様な所見を報告している2

このAtamazらの研究では、患者は3つの治療群のうちの1つに無作為に割り当てられ、ヒアルロン酸ナトリウムの関節内注入、hylan G-F 20の関節内注入、または理学療法による介入のいずれかを施された。アセトアミノフェンの併用(最高2g/日)は許可されたが、NSAIDの使用は禁止された。著者らは複数の転帰を評価し、いくつかの結論を引き出している。第1に、各治療群はWOMACで評価された硬直と関節可動域を除く大部分のカテゴリーで改善を示した。第2に、データは疼痛および機能的な性能の改善において、理学療法がヒアルロナンよりも優れていることを示した。そして第3に、疼痛を抑え、WOMACで評価された機能を改善することに関して、hylan G-F 20はヒアルロン酸ナトリウムよりも優れていた。

制限が多くあるため、この研究の所見をもとに治療上の決定が変更される可能性はあまりないように思われる。膝OAの二重盲検プラセボ対照研究からはプラセボ反応が40~60%にもなることが判明しているため、特にプラセボ群がないという点で、この単純盲検のデザインは理想的でない3。よって、ヒアルロナン系薬剤もしくは理学療法でみられた改善のうち、どのくらいが実際のところ、侵襲的な関節内注入または集中的な実地の理学療法のプラセボ効果に起因していたかを決定することは不可能である。最近のメタアナリシスで報告されているように4、二重盲検のデザインはおそらく可能であり、患者のバイアスを最小限に抑えたはずである。また、プラセボ群が正当化できない場合は、パラセタモールもしくはNSAIDのいずれかで処置した積極比較群を利用することで、ヒアルロナン系薬剤または理学療法による治療効果を評価する力を高めることができたであろう。

この研究では特定の疼痛および機能の転帰が数多く対象とされているため、著者たちが確固とした結論を導くことを困難にしている。よって、どの結果が治療を選択する際に最も重要なものであるかという判断は難しい。さらに、あまりに多くの結果を分析した場合、差異が単なる偶然によるものかどうか明瞭でなくなる。最後に、著者らは理学療法が全体的により多くの改善をもたらすと結論しているが、驚くべきことに彼らは、そのような集中的な理学療法の使用は現時点ではロジスティクス的にあまりに困難であると認めている。また彼らは、高分子量のhylan G-F 20が、いくつかのパラメーターに関して低分子量のヒアルロン酸ナトリウムよりも有効であると述べているが、このようなhylan G-F 20の支持とは相容れない他の研究も引用している。

この研究はOAの治療における新型のヒアルロナン関節内注入薬と、あまり常套的でない理学療法による介入の実用性という重要な問題に取り組んだものである。しかし、研究のデザインに弱点があるためデータの解釈が非常に難しく、したがって、この所見をもとに臨床実務の変更を推奨することはできない。これらの治療や他のOA治療の評価を行うためには、プラセボを対象としたさらなる臨床試験が必要である。

References

  1. Bellamy N et al. (2006) Intraarticular corticosteroid for treatment of osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 2, Art. No CD005328
  2. Paker N et al. (2006) Comparison of the therapeutic efficacy of TENS versus intra-articular hyaluronic acid injection in patients with knee osteoarthritis: a prospective randomized study. Adv Ther 23: 342–353
  3. Clegg DO et al. (2006) Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis. N Engl J Med 354: 795–808 | Article | ChemPort |
  4. Strand V et al. (2006) An integrated analysis of five double-blind, randomized controlled trials evaluating the safety and efficacy of a hyaluronan product for intra-articular injection in osteoarthritis of the knee. Osteoarthritis Cartilage 14: 859–866 | Article | ChemPort |

Main navigation

NPG リソース

Main navigation


Extra navigation

.
ADVERTISEMENT