Practice Point

抗血小板薬投与を受けている患者にPPIを投与すべきか?

原論文

Ibanez L et al. (2006) Upper gastrointestinal bleeding associated with antiplatelet drugs. Aliment Pharmacol Ther 23: 235-242

PRACTICE POINT(診療のポイント)

抗血小板薬治療を受け、上部消化管出血の他のリスク(例:消化性潰瘍や上部消化管出血の既往、または消化不良の前徴)がある患者全員にPPIを使用すべきである。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

抗血小板薬の使用と上部消化管出血(UGIB)リスクの増加は関連している。しかし、このような場合のPPI等の胃保護薬の影響に関するデータはない。

OBJECTIVES(目的)

抗血小板薬投与中の患者におけるUGIBのリスクを明らかにすること、および胃保護薬の影響を調べること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

この多施設共同症例対照研究は、十二指腸/胃潰瘍、びらん性十二指腸炎、胃粘膜の急性病変または混合病変由来の急性UGIBの認められる患者を対象とした。除外基準は、抗凝固薬の使用および上述の原因以外によるUGIBとした。対照患者3例を、年齢、性、入院日により各UGIB適格症例とマッチさせた。マッチさせた対照は、薬物の使用とは関連のない急性の病状、飲酒とは関連のない外傷、無痛性障害に対する待機手術による入院患者であった。UGIB患者および対照に問診を行い、症状および完全な病歴を記録した。各抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール、インドブフェン、チクロピジンおよびトリフルサール)の平均1日量を算出し、用量別に患者をさらに分類した。各薬物についてUGIBのオッズ比(OR)を推定し、消化性潰瘍の既往、NSAID使用、消化性潰瘍疾患、UGIBの既往などの患者側の変数を考慮に入れた。胃保護薬の使用の影響は、対象集団、および消化性潰瘍疾患やUGIBの既往があるなど、基礎リスクを有するサブグループについて求めた。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目は、各抗血小板薬についてのUGIB発生率とUGIBのORとした。

RESULTS(結果)

UGIB症例2,831例と、マッチさせた対照7,193例を本研究の対象とした。UGIB症例2,783例と、マッチさせた対照7,058例が最終回帰分析の対象となった。UGIBのORはアスピリンで4.0(95%CI 3.2~4.9)、クロピドグレルで2.3(95%CI 0.9~6.0)、ジピリダモールで0.9(95%CI 0.4~2.0)、インドブフェンで3.8(95%CI 1.2~12.2)、チクロピジンで3.1(95%CI 1.8~5.1)およびトリフルサールで1.6(95%CI 0.9~2.7)であった。PPIと併用すると、アスピリンおよび非アスピリン系抗血小板薬に関連するUGIBのORは、それぞれ4.0(95%CI 3.2~4.9)から1.1(95%CI 0.5~2.6)に、2.1(95%CI 1.5~2.9)から0.9(95%CI 0.4~2.3)に低下した。PPIは基礎リスクの全患者カテゴリーでUGIBリスクを減少させた。たとえば、消化性潰瘍の既往のある入院患者では、UGIBのORは8.6(95%CI 5.3~12.9)から3.0(95%CI 0.9~9.4)に低下した。全UGIB症例の14.5%は抗血小板薬が原因である。

CONCLUSION(結論)

PPIと抗血小板薬の併用によりUGIBリスクは低下する。抗血小板薬投与および併用PPI療法を受けた患者では、非アスピリン系抗血小板薬よりもアスピリンのほうがUGIBリスクを低下させるようである。

KEYWORDS(キーワード)

抗血小板薬、PPI、リスク、上部消化管出血

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COMMENTARY(解説)

Stephan R Vavricka, Stephan M Wildi and Michael Fried

抗血小板療法は、安定冠動脈性心疾患、急性冠症候群、虚血性脳卒中および末梢動脈疾患を有する患者のアテローム血栓性イベントの予後を改善している。しかし、出血性合併症(ほとんどが上部消化管が原因)のために抗血小板薬の使用は制限される。抗血小板療法を受けている患者を対象とした胃保護薬がもたらす保護に関するデータはほとんどない。アスピリン75~100mg/日を服用し、危険因子が認められない患者に対するPPIまたは細胞保護薬のルーチンの使用は推奨されていない。この状態での消化管保護戦略の有効性を証明している無作為化試験はまだないからである1

この大規模症例対照研究で、Ibanezらは、抗血小板薬治療を受けている患者ではPPI療法の併用によりUGIBリスクがかなり低下することを報告した。リスク低下は全リスク群で認められた。高リスク患者における同様の結果は、3件の無作為化対照研究と1件の症例対照研究ですでに発表されている。いずれの研究も、抗血小板薬とPPIの併用治療を受けている患者でのUGIBリスクの低下を示している2-5。さらに、PPIの併用により、アスピリンまたはクロピドグレルを投与されている患者でUGIB発現率が低下することを明らかにしている6。最近の研究では、上部消化管出血を最近経験した患者に低用量アスピリンと高用量エソメプラゾールを併用投与すると、クロピドグレル単独投与よりもUGIBの発現が減少することが示唆された。このため、いくつかの研究が、PPI療法はUGIBリスクを低下させ得ると示唆している。

Ibanezらが本研究を発表したことで、ジグソーパズルに新たなピースが加わった。消化性潰瘍やUGIBの既往、消化不良の前徴、またはNSAIDの併用など、その他のリスクがなくても、抗血小板薬を投与されている患者ではPPI併用療法によりUGIBリスクが低下し得る。

今後の研究に注目すべきである。Ibanezらの結果を裏付けるデータが多数必要である。加えて、今後の研究では、制酸薬療法の時代に出血を予測する臨床的指標をより多く特定しなければならない。研究はPPIと抗血小板薬の併用に最適な期間、とくにこの治療戦略にかかる費用と費用効果にも焦点を当てるべきである。この投薬レジメンに対するコンプライアンスが併用療法の有用性を制限してしまう可能性があるからである。こうしたコンプライアンスの問題は、主にすでに数種類の薬物を服用している患者に当てはまる。アスピリン+クロピドグレル投与を受けている患者におけるPPIの予防的投与の効果については、さらなるデータが必要である。

以上をまとめると、PPIは、抗血小板治療を受け、UGIBの他のリスクがある(例:消化性潰瘍やUGIBの既往、消化不良の前徴、NSAIDの併用)全患者に使用すべきである。しかし、最終的にこれを結論づけるデータが得られるまでは、抗血小板治療を受けている低リスクプロファイル患者に対するPPIのルーチンの使用は勧められない。

Acknowledgments

The synopsis was written by Rachel Jones, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Patrono C et al. (2004) Expert consensus document on the use of antiplatelet agents. Eur Heart J 25: 166–181  | Article | PubMed |
  2. Chan FK et al. (2001) Preventing recurrent upper gastrointestinal bleeding in patients with Helicobacter pylori infection who are taking low-dose aspirin or naproxen. N Engl J Med 344: 967–973  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  3. Lai KC et al. (2002) Lansoprazole for the prevention of recurrences of ulcer complications from long-term low-dose aspirin use. N Engl J Med 346: 2033–2038  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  4. Chan FK et al. (2005) Clopidogrel versus aspirin and esomeprazole to prevent recurrent ulcer bleeding. N Engl J Med 352: 238–244  | Article | PubMed |
  5. Lanas A et al. (2000) Nitrovasodilators, low-dose aspirin, other nonsteroidal antiinflammatory drugs, and the risk of upper gastrointestinal bleeding. N Engl J Med 343: 834–849  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  6. Ng FH et al. (2004) Clopidogrel plus omeprazol compared with aspirin plus omeprazole for aspirin-induced symptomatic peptic ulcers/erosions with low to moderate bleeding/re-bleeding risk—a single-blind randomized controlled study. Aliment Pharmacol Ther 19: 359–365  | Article | PubMed |

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