Practice Point

放射性ヨウ素療法は甲状腺癌の遠隔転移の治療にどの程度有益か?

原論文

Durante C et al. (2006) Long-term outcome of 444 patients with distant metastases from papillary and follicular thyroid carcinoma: benefits and limitations of radioiodine therapy. J Clin Endocrinol Metab 91: 2892-2899

PRACTICE POINT(診療のポイント)

放射性ヨウ素療法は、肺転移を早期に発見された若年患者には非常に有効であるが、22.2 GBqを超える131Iの累積線量には危険性があり、生涯にわたる経過観察が必要である。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

甲状腺癌患者における最大の死因は遠隔転移である。しかし、遠隔転移は放射性ヨウ素療法により寛解する可能性があり、一部の症例では生存が改善している。

OBJECTIVES(目的)

放射性ヨウ素療法が最も奏功すると考えられる患者群を特定すること。

DESIGN(デザイン)

本試験は、1953年から1994年にかけてフランスの1医療機関で治療を受けた、甲状腺癌による遠隔転移のある患者を対象とした後ろ向き試験であった。甲状腺乳頭癌(PTC)あるいは甲状腺濾胞癌(FTC)の患者を試験に組み入れ、甲状腺未分化癌あるいはサイログロブリン免疫染色の結果が陰性の患者を除外した。甲状腺の原発病変を手術によって治療し、その後放射性ヨウ素による除去療法を行った。TSH値を抑制するために、患者全員にレボチロキシンを投与した。131I全身シンチグラフィ(131I-WBS)と標準的X線撮影によって癌の持続あるいは再発を評価した。レボチロキシンの投与を中止した後は、診断のために2~3年ごとに131I全身シンチグラフィを実施した。年に1度、血清サイログロブリン値を測定した。転移癌には放射性ヨウ素療法による治療を行い、3~5日後に131I全身シンチグラフィを実施した。転移に対する治療後に131Iを摂取した患者には、さらに放射性ヨウ素療法を行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

治療の効果を、131I全身シンチグラフィとX線スキャンにより判定した。

RESULTS(結果)

試験コホートには、甲状腺乳頭癌患者187例、高分化型甲状腺濾胞癌患者68例、低分化型甲状腺濾胞癌患者183例が含まれた。患者403例中396例に対して、甲状腺の手術と放射性ヨウ素療法がそれぞれ施行された。骨と肺は遠隔転移の頻度が最も高い部位であり、転移箇所は原発腫瘍のタイプや転移癌の診断時の年齢などの多くの要因の影響を受けていた。患者の68%が131Iを摂取しており、40歳超の患者と高分化型甲状腺濾胞癌の患者でその頻度がより高かった。合計378例の患者が遠隔転移に対して放射性ヨウ素療法を受けた。初めて131Iを摂取した患者295例中127例が、治療後に画像診断の結果が陰性となった。これらの患者は40歳未満で、原発腫瘍が高分化型のものであり、転移が限局されている傾向にあった。スキャン陰性は、累積線量3.7~22.2GBpの放射性ヨウ素によって達成された。スキャン陰性を達成した患者を、平均14年間追跡した。この間患者9例が再発し、31例(24%)が死亡した。放射性ヨウ素療法後にスキャン陰性が達成されなかった患者168例のうち143例(85%)が、追跡中に死亡した。更に、最初に131Iを摂取しなかった患者のうち119例が追跡中に死亡した。131Iを摂取した患者の15年生存率は40%であり、これに対して131Iを摂取しなかった患者ではわずか6%であった。放射性ヨウ素療法後、スキャン陰性を達成した患者の10年生存率は92%、達成しなかった患者では19%であった。

CONCLUSION(結論)

放射線ヨウ素療法は、高分化型原発腫瘍のある転移の少ない若年患者に最も有効であり、スキャンの結果が陰性になるまで継続すべきである。

KEYWORDS(キーワード)

遠隔転移放射性ヨウ素生存甲状腺癌

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COMMENTARY(解説)

Ernest L Mazzaferri

甲状腺乳頭癌(PTC)と甲状腺濾胞癌(FTC)は甲状腺癌の91%を占め、それぞれ93%と85%という高い10年生存率を示すにもかかわらず、甲状腺癌による全死亡数の約70%を占める1。これは、患者の10~15%が遠隔転移を起こし、その約半数が肺に生じ、甲状腺癌患者における癌による最大の死因である呼吸不全を引き起こすためである2131Iを用いた放射性ヨウ素療法は肺転移に対する標準的な治療法であるが、その効果にはいまだ議論がある。Dinneenら3は、131Iを用いた治療は甲状腺乳頭癌からの遠隔転移を起こした患者100人の生存に影響を及ぼすことはなかったが、患者の大多数(85%)には診断時にすでに遠隔転移の放射線学的所見(単純X線によるもの)があったと報告している。放射性ヨウ素療法により影響を受けることのなかった癌の10年生存率は、年齢8~91歳(中央値61歳)のこの患者集団ではわずか27%であり、1940年と1989年で有意差はなかった。これとは対照的にHindiéら4は、甲状腺乳頭癌からの肺転移のある患者群20人(平均年齢29歳)における全体の10年生存率は84%であり、これはX線では検出できない転移が131I全身シンチグラフィによって早期に診断され、放射性ヨウ素療法が行われたためだと報告している。最後にBalら5は、28人の小児および若年者では、33.2±28.5カ月にわたり累積放射能13.02±9.73GBqの131Iを用いて平均3.3回の治療を行った後、甲状腺乳頭癌からの肺転移の70%が悪化したことを明らかにしている。良好な結果の大多数は、肺転移がX線やCTスキャンに異常が出る前に術後の131I全身シンチグラフィにより発見された場合に認められた。胸部X線により肺転移が診断された場合、小児にはかなり高線量の131Iが必要であり、腫瘍が残存する割合と癌による死亡率が高かった。

Duranteらは本研究において、(131I全身シンチグラフィが導入された)1960年以降と、(血清サイログロブリンの判定が著者らの医療機関でルーチンに行われるようになった)1976年以降、遠隔転移が検出された場合の予後が改善し、それはこうした診療上の変化が一般に早期の診断と治療に結びついたためであることを明らかにしている。10年全生存率は、131I療法後に転移が消失した場合に最も高く(92%)、131I療法後も腫瘍が残存した場合に中程度であり(29%)、最初に131Iを摂取しなかった時に最も低かった(10%)。それでも、遠隔転移に初めて131Iを摂取した患者のうち、わずか33%が寛解に達したにすぎない。TSHに刺激された血清サイログロブリン値が上昇(10μg/L超)した以外に疾患のエビデンスがないにもかかわらず、131I療法は反復して行われ、治療後の131I全身シンチグラフィにおいて131Iの取り込みがみられなくなるまで継続された。腫瘍を除去するためには中央値8.14 GBqの131I(2.41~25.90 GBqの範囲)を要したが、必要な線量は癌の広がり方に関係し、胸部X線検査が正常の場合の必要量は7.40 GBq、小結節性の肺転移がある場合は11.47 GBq、大結節性の肺転移がある場合は12.95 GBq、骨転移がある場合は最大22.20 GBqであった。しかし、寛解を達成した患者の7%が、追跡の14±9年後に腫瘍を再発している。131Iの多量の累積放射能量は固形腫瘍や白血病のリスク増加と関連するため、累積線量が22.2 GBq以上の131Iの投与は慎重に患者個人の状態に合わせるべきだとの但し書きをつけながらも、著者らは131Iの取り込みが消失するまで患者を治療することを推奨している。

Acknowledgments

The synopsis was written by Vicky Heath, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Hundahl SA et al. (1998) A National Cancer Data Base report on 53,856 cases of thyroid carcinoma treated in the US, 1985–1995. Cancer 83: 2638–2648 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Kitamura Y et al. (1999) Immediate causes of death in thyroid carcinoma: clinicopathological analysis of 161 fatal cases. J Clin Endocrinol Metab 84: 4043–4049 | Article | PubMed | ChemPort |
  3. Dinneen SF et al. (1995) Distant metastases in papillary thyroid carcinoma: 100 cases observed at one institution during 5 decades. J Clin Endocrinol Metab 80: 2041–2045 | Article | PubMed | ChemPort |
  4. Hindié E et al. (2003) Functioning pulmonary metastases of thyroid cancer: does radioiodine influence the prognosis? Eur J Nucl Med Mol Imaging 30: 974–981 | PubMed |
  5. Bal CS et al. (2004) Is chest X-ray or high-resolution computed tomography scan of the chest sufficient investigation to detect pulmonary metastasis in pediatric differentiated thyroid cancer? Thyroid 14: 217–225 | Article | PubMed | ChemPort |

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