2型糖尿病患者においてフェノフィブラートが心血管疾患イベントに与える影響
原論文
Keech A et al. (2005) Effects of long-term fenofibrate therapy on cardiovascular events in 9795 people with type 2 diabetes mellitus (the FIELD study): randomized controlled trial. Lancet 366: 1849-1861
PRACTICE POINT(診療のポイント)
糖尿病患者において、スタチン系薬剤は、今なお心血管疾患リスクの管理に用いられる第一選択の脂質調整薬である。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
2型糖尿病は、異常な脂質プロファイルおよび心血管疾患(CVD)リスク増加に関連している。脂質低下薬による治療は有効であると思われるが、臨床エンドポイントを設定した大規模試験が必要である。
OBJECTIVES(目的)
2型糖尿病患者におけるフェノフィブラートの効果を評価すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
オーストラリア、ニュージーランド、フィンランドの参加者を、5年間の多施設共同無作為化プラセボ対照試験であるFenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes(FIELD)試験に組み入れた。WHO基準により2型糖尿病と診断された患者を適格とした。その他の選択基準は、総コレステロール値3.0~6.5mmol/Lかつ、トリグリセリド値1~5mmol/Lまたは総コレステロール:HDLコレステロール比≧4のいずれかとした。慢性肝疾患、腎機能障害、症候性胆嚢疾患を有する患者、最近CVDイベントが発現した患者、またはすでに脂質低下薬の投与を受けている患者は除外した。全参加者に、4週間の食事療法、6週間のプラセボ投与、6週間のフェノフィブラート投与から成る16週間の導入期を設定した。つぎに、患者をプラセボまたはフェノフィブラート200mgのいずれかを1日1回投与する群に無作為に割り付け、4~6カ月ごとに追跡した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は、非致死的心筋梗塞または冠動脈疾患死とした。副次的評価項目は、全CVDイベント(主要CVDイベント+冠動脈・頸動脈血行再建術)および重篤な副作用の発現とした。
RESULTS(結果)
本試験群は主に男性(63%)および白人(93%)で構成され、平均年齢62.2歳、22%にCVDの既往があった。合計4,895例がフェノフィブラート群、4,900例がプラセボ群であった。脱落率はフェノフィブラート群11%、プラセボ群10%であった。試験期間中、他の脂質低下薬を処方した患者の割合は、プラセボ群17%、フェノフィブラート群8%であった(P<0.0001)。冠動脈イベントは、フェノフィブラート群256例、プラセボ群288例に発現した(相対リスク低下11%、ハザード比[HR]0.89、95%CI 0.75~1.05、P=0.16)。フェノフィブラートにより、非致死的心筋梗塞は相対的に24%減少し(HR 0.76、95%CI 0.62~0.94、P=0.01)、冠動脈疾患死は相対的に11%増加した(HR 1.19、95%CI 0.90~1.57、P=0.22)。全CVDイベントはフェノフィブラート群で少なかった(HR 0.89、95%CI 0.80~0.99、P=0.035)。死亡は2群間で有意差がなかった。アルブミン尿への進展およびレーザー治療を要する網膜症の発生もフェノフィブラート群で減少した。全体的に、治療効果はCVDの既往のない患者でより顕著であった(P=0.004)。フェノフィブラートは忍容性が高く、重篤な有害事象が発現したのはわずか38例であった。フェノフィブラートによる治療は、膵炎(P=0.031)、肺塞栓症(P=0.022)、深部静脈血栓症(P=0.074)のリスク増加と関連していた。
CONCLUSION(結論)
とくにCVDの既往のない2型糖尿病患者において、フェノフィブラートは全CVDイベントを減少させた。
KEYWORDS(キーワード)
心血管イベント, フェノフィブラート, 脂質, 2型糖尿病
COMMENTARY(解説)
Theodore Mazzone
糖尿病患者でCVDが急速に進行するという問題は、臨床上および公衆衛生上の重要な課題である1。複数のクラスの薬剤による高血圧治療またはスタチン系薬剤による高脂血症治療などの有効な管理は、心血管リスクの低下に確実に役立つことが明らかになっている。しかし、残存する過剰リスクがあると思われるため、このリスクを管理するための異なるアプローチが求められている2。
FIELD試験は、2型糖尿病患者を対象に、CVD予防に対するフェノフィブラートの有用性を検討している3。より小規模の先行研究の結果では、フィブラート系薬剤による治療は、糖尿病患者におけるCVDの発現を抑える可能性があることが示唆された4。しかし、FIELD試験終了時には、一次エンドポイント(冠動脈疾患死と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント)に投与群間で差はみられなかった。このエンドポイントの中でも、非致死的心筋梗塞の発現が有意に減少したが、これは、冠動脈疾患死の発現が有意ではないが増加を示したことで相殺された。二次エンドポイントの解析から、冠動脈血行再建術の21%減を受けて、全CVDイベントの有意な減少が示された。脳卒中、CVD死、全死亡を含む他の二次エンドポイントには有意差はみられなかった。フェノフィブラート治療により、LDLコレステロール値とトリグリセリド値は低下しなかった。この現象は試験期間を通して維持された(試験終了時にはそれぞれ5.8%、21.9%減)。しかし、初期のHDLコレステロール値上昇(4カ月後で5.1%)は、試験終了時にはかなりの低下(1.2%に)を示した。試験期間中、両群で相当数の患者がスタチン療法を開始した。治験責任医師はスタチンの追加使用を予想していたものの、フェノフィブラートのCVDイベントに対する効果は試験デザインで考えられていた効果よりも低かった。
糖尿病におけるCVDリスク管理にあたり、FIELD試験から何が得られるのであろうか? 第1に、スタチン系薬剤は今なお、CVDリスク管理のための第一選択の脂質調整薬である。目標LDLコレステロール値が示される患者もこの治療の対象となっている。その理由は、スタチン系薬剤はこのような患者でもCVD死を有意に減少させることができるからである。第2に、スタチン療法にフィブラート系薬剤を追加するとトリグリセリド値やHDLコレステロール値が改善することは間違いないが、CVDイベント減少との関連を示すエビデンスが必要である。この点で、Veterans Affairs High Density Lipoprotein Intervention Trial(VA-HIT)4において、gemfibrozil投与により、糖尿病患者では非糖尿病者よりもHDLコレステロール値の上昇程度が小さく、CVDイベントの減少程度は大きいことが示されたことは興味深い。幸運にも、現在進行中のAction to Control Cardiovascular Risk in Diabetes(ACCORD)試験2で、糖尿病患者を対象に、フィブラート療法のスタチン療法への追加がCVDエンドポイントを減少させるか否かを直接検討する予定である。第3に、FIELD試験は、糖尿病について新しいCVDエンドポイントを設定した試験の一般的問題を明確に示している。スタチン系薬剤は、さまざまな患者において、CVDイベントの減少にきわめて有効であり、高リスク患者のCVD予防に対する標準的なケアとなっている。このことは、新規薬剤により、糖尿病におけるCVDリスクがさらに減少することを証明する試験を計画するうえで重要な課題である。
以上をまとめると、FIELD試験の結果からは、糖尿病でのCVDリスク管理におけるフィブラート系薬剤の位置は明確にならなかった。フィブラート療法をスタチン療法に追加することで、特定の糖尿病患者サブグループでCVDリスクを抑えることはできるであろうが、この点を確認するにはさらに別のエビデンスが必要である。
Acknowledgments
The synopsis was written by Vicky Heath, Associate Editor, Nature Clinical Practice.
References
- Mazzone T (2005) Reducing cardiovascular disease in patients with diabetes mellitus. Curr Opin Cardiol 20: 245–249 | Article | PubMed |
- Mazzone T (2004) Strategies in ongoing clinical trials to reduce cardiovascular disease in patients with diabetes mellitus and insulin resistance. Am J Cardiol 93 (Suppl 1): 27C–31C
- Calhoun H (2005) After FIELD: should fibrates be used to prevent cardiovascular disease in diabetes? Lancet 366: 1829–1831 | PubMed |
- Rubins HR et al. (2002) Diabetes, plasma insulin, and cardiovascular disease subgroup analysis from the Department of Veterans Affairs high-density lipoprotein intervention trial (VA-HIT). Arch Intern Med 162: 2597–2604 | Article | PubMed | ChemPort |
