Practice Point

2型糖尿病の治療において早期の併用療法は効果的か?

原論文

Gerich J et al. (2005) PRESERVE-: two-year efficacy and safety of initial combination therapy with nateglinide or glyburide plus metformin. Diabetes Care 28: 2093-2099

PRACTICE POINT(診療のポイント)

多くの患者において、2型糖尿病に対する最初の薬剤療法としてのメトホルミンとインスリン分泌促進薬の併用投与により、7%以下のHbA1cが達成され、2年にわたり維持することが可能である。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

2型糖尿病を効果的に管理するためには、複数の薬剤による治療が必要である。大多数のガイドラインでは、血糖コントロールが目標値を下回るに応じて、段階的に新薬を加える方法を支持している。しかし、相補的機序によって作用する薬剤の併用による早期の介入がそれに替わる戦略として提案されている。

OBJECTIVES(目的)

メトホルミンとナテグリニドあるいはグリブリドによる早期の併用療法の有効性を評価すること。

DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)

薬剤未投与の2型糖尿病患者を、104週にわたる多施設共同無作為化試験に組み入れた。選択基準は、年齢18~77歳、グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)7~11%、空腹時血糖(FPG)15mmol/L以下、体格指数(BMI)22~45kg/m2などであった。I型糖尿病患者、腎機能に異常のある患者、最近症候性低血糖を発症した患者は除外した。適格患者を、4週間にわたりナテグリニド120mgとメトホルミン500mg併用(ナテグリニド/メトホルミン群)、あるいはグリブリド1.25mgとメトホルミン500mg併用(グリブリド/メトホルミン群)に無作為に割り付けた。隔週ごとのFPGが6.7mmol/L以上の場合は、グリブリドとメトホルミンをそれぞれ1日最大投与量である10mgと2gまで増量させる12週間の用量調節期間を設けた。ナテグリニドの用量は一定とした。その後、合計88週間にわたり、患者に対して定期的にモニタリングを行った。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目はHbA1cとした。副次的評価項目は、FPG、BMI、食後の血糖変動とした。

RESULTS(結果)

ナテグリニド/メトホルミン群は患者208人、グリブリド/メトホルミン群は患者198人で構成され、ベースライン特性は同様で、HbA1c平均値は8.35%であった。どちらの治療法もHbA1cを低下させ、ベースラインから104週目までの低下の平均値はナテグリニド/メトホルミン群で1.2%、グリブリド/メトホルミン群で1.5%であった。104週目のHbA1c平均値は、ナテグリニド/メトホルミン群で7.0%、グリブリド/メトホルミン群で6.7%であった。2年間の治療後、ナテグリニド/メトホルミン群の39%とグリブリド/メトホルミン群の43%が7.0%のHbA1c目標値を維持していた。FPGは、ナテグリニド/メトホルミン群で平均1.6mmol/L、グリブリド/メトホルミン群で平均2.4mmol/L低下した。対照的に、食後の血糖変動における低下は、ナテグリニド/メトホルミン群の94mmol/L/分に対してグリブリド/メトホルミン群では57mmol/L/分であった。BMIはナテグリニド/メトホルミン群ではわずかに低下したが、グリブリド/メトホルミン群では増加した(両群の差は1.2kg、P=0.0115)。全体でナテグリニド/メトホルミン群の91.8%とグリブリド/メトホルミン群の90.9%に副作用がみられた。低血糖はグリブリド/メトホルミン群の17.7%で報告されたが、ナテグリニド/メトホルミン群では8.2%であった(P=0.003)。ナテグリニド/メトホルミン群の患者には、重度の低血糖エピソードはなかった。

CONCLUSION(結論)

メトホルミンとナテグリニドあるいはグリブリドによる早期併用療法により、2型糖尿病患者における血糖コントロールの維持が可能である。しかし、段階的方法との直接の比較が今後必要である。

KEYWORDS(キーワード)

併用療法, グリブリド, 血糖コントロール, ナテグリニド, 2型糖尿病

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COMMENTARY(解説)

Matthew C Riddle

近年2型糖尿病に対して複数の戦略が確立されている。その中には、望ましい効果を最大限に引き出しつつ望ましくない影響を最小限に止めることを目的とした、2つ以上の治療法の併用、効果を最大限にするため個人に併せて調節した用量、エビデンスに基づいたHbA1c目標値を満たすことなどがある1,2。もっとも広く容認された血糖コントロールの目標は7%のHbA1cであるが、どの薬剤が多様なカテゴリーの患者にもっとも適合するかはよくわかっていない。HbA1cの目標値に到達する効能のほか、薬剤がしばしば比較される基準としては、治療中の低血糖と体重増加のリスクと、他の治療を加えずにどのくらいの期間血糖コントロールを維持できるかなどがある。

Gerichらは最近糖尿病と診断された患者においてこれらの指針の適用を試み、インスリン分泌促進薬であるグリブリドとナテグリニドという2種類の薬剤を比較した。メトホルミンとグリブリドの用量をいずれも低用量から徐々に増加すること、またHbA1cが中等度に上昇している薬剤未投与の患者で治療を開始することにより、彼らはこの戦略が2年間にもわたって多くの患者で血糖コントロールを維持することを確認した。HbA1cが優に9%を超える患者の治療が1種類の薬剤によって始められ、治療を行っても7%のHbA1c目標値が達成されないことの多い診療の場で、この知見は大いに重要性をもつ。

著者らによるメトホルミン+グリブリド併用とメトホルミン+ナテグリニド併用の比較も興味深い。1日1回のグリブリドと1日3回のナテグリニド投与は、HbA1cの低下に同様に効果がある。どちらの薬剤でも低血糖はほとんど起こらないが、ナテグリニドのほうが頻度は低く、また体重の増加もきたしにくい。しかし本試験は、ナテグリニドについて、同様にグリブリドと比べて低血糖を引き起こす頻度が低いグリメピリドのような他のインスリン分泌促進薬や、グリクラジドやglipizideなどの徐放性製剤を上回る同様のメリットをもつか否かを示してはいない3

試験の名称から判断すると、研究者らはナテグリニドを用いた治療が細胞の機能保持によって血糖コントロールを維持すると考えたようである。しかし、そのような効果は明らかでない。グリブリドとナテグリニドのいずれを用いても、治療28週目に底値に到達した後、HbA1cは1年につき0.3%程度の割合で上昇した。この割合は、新規に診断された患者を対象としたUnited Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)4で観察された割合とほぼ同じである。生活習慣を修正して比較した場合、UKPDSの参加者においてメトホルミンあるいはインスリンを用いた治療により細胞の明らかな機能低下が遅延することはなく、一方でスルホニル尿素薬は細胞の劣化を加速しなかった。本試験でも、グリブリドとナテグリニドのいずれにおいても、細胞への有害な効果も保護効果もみられなかった。複数のエビデンスからは、thiazolidinedioneが血糖コントロールにおいてより優れた持続効果をもつことが示唆されているが、ピオグリタゾン+スルホニル尿素薬併用とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用を比較した同様のデザインの試験では、1年以内の観察後では血糖反応にいかなる差も見出されなかった5

Gerichらの知見は、2型糖尿病の早期における経口薬剤の併用利用をさらに支持するものである。グリブリドとナテグリニドは共に、メトホルミンとの併用で安全かつ効果的に利用することができる。一部の症例では、体重増加と低血糖症を引き起こしにくいナテグリニドの性質が、投与回数の多さと現在の高コストを超えて評価されたものと思われる。

Acknowledgments

The synopsis was written by Vicky Heath, Associate Editor, Nature Clinical Practice.

References

  1. Riddle MC (2005) Glycemic management of type 2 diabetes: an emerging strategy with oral agents, insulins, and combinations. Endocrinol Metab Clin North Am 34: 77–98  | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  2. Riddle M (2000) Combining sulfonylureas and other oral agents. Am J Med 108 (Suppl 6A): 15S–22S
  3. Zammitt NN et al. (2005) Hypoglycemia in type 2 diabetes: pathophysiology, frequency, and effects of different treatment modalities. Diabetes Care 28: 2948–2961  | PubMed | ISI |
  4. UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group (1995) UK Prospective Diabetes Study 16. Overview of 6 years' therapy of type II diabetes: a progressive disease. Diabetes 44: 1249–1258
  5. Hanefeld M et al. (2004) One-year glycemic control with a sulfonylurea plus pioglitazone versus a sulfonylurea plus metformin in patients with type 2 diabetes. Diabetes Care 27: 141-147  | PubMed | ISI | ChemPort |

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