アテローム血栓性イベントリスクの高いすべての患者に対して2剤併用抗血小板療法を行うべきか?
原論文
Bhatt DL et al. for the CHARISMA Investigators (2006) Clopidogrel and aspirin versus aspirin alone for the prevention of atherothrombotic events. N Engl J Med 354: 1706–1717
PRACTICE POINT(診療のポイント)
さらなる検討により長期間にわたる予防的な2剤併用抗血小板療法が支持されるまでは、血管疾患が確認された患者および心血管リスク因子を有する無症候性患者において、その使用は避けるべきである。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
虚血イベントリスクの高い不安定狭心症または心筋梗塞の患者に対するアスピリンの抗血栓治療は、clopidogrelの併用により増強することができる。アスピリンとclopidogrelの2剤併用療法が、アテローム血栓性イベントリスクの高い患者において、血管イベント発生率を低下させるかどうかは不明である。
OBJECTIVES(目的)
アテローム血栓性イベント発生率に対するクロピドルレル+アスピリン併用療法とアスピリン単独療法の効果を比較すること。
DESIGN(デザイン)
二重盲検によるClopidogrel for High Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management, and Avoidance(CHARISMA)研究では、45歳以上で、冠動脈疾患、脳血管疾患または症候性末梢動脈疾患と診断された患者、または多数のアテローム血栓性リスク因子を有する患者を前向きに登録した。
INTERVENTION(介入)
すべての適格患者を、clopidogre(75mg/日)+アスピリン(75~162mg/日)を投与する群、またはプラセボ+アスピリン(75~162mg/日)を投与する群に無作為に割り付け、さらに標準的な基礎療法も行った。1、3、6カ月目、およびその後6カ月毎の追跡調査の来院時に、服薬遵守およびすべての介入と事象を記録した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
有効性に関する主要エンドポイントは、最初に起こった脳卒中、心筋梗塞、または心血管系の原因による死亡とした。安全性に関する主なエンドポイントは、大量出血の発生率とした。
RESULTS(結果)
合計で、患者7,802例が併用療法を、7,801例がプラセボ+アスピリン療法を受けた。中央値で28カ月間追跡後、両群間に、心血管系の原因による死亡、脳卒中、または心筋梗塞の発生数に関する有意差は認められなかった(アスピリン+clopidogrel群534件[6.8%]対アスピリン+プラセボ群573件[7.3%]、相対リスク0.93、95%CI 0.83~1.05、P=0.22)。有効性に関する副次的エンドポイント-主要エンドポイントに血行再建術および不安定狭心症または一過性脳虚血発作による入院を追加-の発生率は、2剤併用抗血小板療法群のほうが、アスピリン単独療法群より低かった(1,301件[16.7%]対1,395件[17.9%]、相対リスク0.92、95%CI 0.86~0.995、P=0.04)。しかし、大量出血イベントの発生率はclopidogrel+アスピリン群のほうがわずかに高かった(130件[1.7%]対104件[1.3%]、相対リスク1.25、95%CI 0.97~1.61、P=0.09)。複数のアテローム血栓性リスク因子を有する患者(無症候性患者)については、2剤併用抗血小板療法群で、アスピリン単独療法群に比べて、有害事象(6.6%対5.5%、相対リスク1.2、95%CI 0.91~1.59、P=0.20)および心血管関連の死亡(5.4%対3.8%、P=0.04)が多かった。冠動脈疾患、脳血管疾患、または末梢血管疾患が報告された患者(症候性患者)において、clopidogrelの併用により、わずかに付加効果が認められたことは注目に値する。
CONCLUSION(結論)
アテローム血栓性イベントリスクのある患者における、clopidogrelとアスピリンの併用療法は支持されない。症候性患者では効果が得られる可能性があるが、2剤併用抗血小板療法は、無症候性患者にとって有害である可能性がある。
KEYWORDS(キーワード)
アスピリン、clopidogrel、心筋梗塞、脳卒中
COMMENTARY(解説)
Karen E Thomas and Duane S Pinto
抗血小板療法は、心血管疾患の治療において重要な役割を果たしている。シクロオキシゲナーゼの非可逆的阻害薬であるアスピリンは、多数の大規模無作為化試験において、心筋梗塞、脳卒中、死亡の発生率を大きく低下させることが示されている1。チエノピリジン系薬剤は、ADP P2Y12受容体を阻害する抗血小板薬に分類される。CAPRIE試験では、チエノピリジン系薬剤であるclopidogrelが、アスピリンに比べ、アテローム硬化性疾患が確認された患者における心筋梗塞、脳卒中、死亡の予防において、わずかに効果的であることが示された2。不安定狭心症、急性心筋梗塞、または経皮的冠動脈形成術後の患者において、チエノピリジン系薬剤をアスピリンと併用すると、アテローム血栓性の合併症が短期的に減少する3-5。CHARISMA研究は、clopidogrelとアスピリンの2剤併用抗血小板療法がアスピリン単独療法より優れているかどうかを検討した最初の長期試験である。
CHARISMA研究には、症候性と無症候性という異なる2つの患者集団が登録された。症候性患者(n=12,319)は、血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、症候性末梢動脈疾患、または冠動脈血行再建術)の既往歴のある患者、無症候性患者(n=3,284)は、複数のリスク因子を有する血管イベントリスクのある患者であった。
CHARISMA研究では、アスピリン単独療法と比較した場合の2剤併用抗血小板療法の優位性は証明されなかった。すべての患者について検討した場合、主要エンドポイント(心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中の複合)は、両投与群で同等であった(イベント発生率は、clopidogrel+アスピリン群6.8%対アスピリン単独群7.3%、P=0.22)。さらに、clopidogrel投与を受けた患者では、中等度の出血リスクが有意に増加し(2.1%対1.3%、P<0.001)、有意ではないが重度の出血リスクも増加した(1.7%対1.3%、P=0.09)
事前に規定した患者のサブグループに基づいて解析した場合、症候性患者では、2剤併用抗血小板療法群において、アスピリン単独療法群より、主要エンドポイントがわずかではあるが有意に減少した(6.9%対7.9%、P=0.046)。これとは対照的に、無症候性患者では、2剤併用抗血小板療法群において、主要エンドポイントの有意ではない増加(6.6%対5.5%、P=0.20)と死亡率の上昇(5.4%対3.8%、P=0.04)が認められた。
サブグループ解析に伴う制限、とくに、偶然の可能性と予期せぬ交絡因子を考慮すると、CHARISMA研究の結果は慎重に解釈する必要がある。CHARISMA研究では、無症候性患者の一次予防に使用されるアスピリンに、clopidogrelを併用すべきでないことが証明された。本試験の結果から、一部の症候性患者において、長期間にわたる2剤併用抗血小板療法から効果が得られる可能性が示唆されたが、血管イベントの既往歴のある不均一な患者集団から、効果が得られる患者を正確に識別するためのデータは限られている6。さらに、症候性患者における、2剤併用抗血小板療法に関連する主要イベントの1.0%の絶対減少率が、中等度の出血リスクの0.8%の増加より重要であるかどうかについても、ある程度考慮する必要がある。
結論として、CHARISMA研究から、心血管疾患患者の治療指針となる重要な情報が提供されている。血管リスク因子を有する無症候性患者においては、2剤併用抗血小板療法は効果がなく、使用すべきではない。血管イベントの既往歴のある患者においては、長期間にわたるclopidogrelを用いた2剤併用抗血小板療法を支持するためにはさらなるデータが必要である。
Acknowledgments
The synopsis was written by Hannah Camm, Associate Editor, Nature Clinical Practice.
References
- [No authors listed] (1994) Collaborative overview of randomised trials of antiplatelet therapy—I: prevention of death, myocardial infarction, and stroke by prolonged antiplatelet therapy in various categories of patients. Antiplatelet Trialists' Collaboration. BMJ 308: 81–106
- [No authors listed] (1996) A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). CAPRIE Steering Committee. Lancet 348: 1329–1339
- Yusuf S et al.; The Clopidogrel in Unstable Angina to Prevent Recurrent Events Trial Investigators (2001) Effects of clopidogrel in addition to aspirin in patients with acute coronary syndromes without ST-segment elevation. N Engl J Med 345: 494–502 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Sabatine MS et al. (2005) Addition of clopidogrel to aspirin and fibrinolytic therapy for myocardial infarction with ST-segment elevation. N Engl J Med 352: 1179–1189 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Leon MB et al. (1998) A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronary-artery stenting. N Engl J Med 339: 1665–1671 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
- Pfeffer MA and Jarcho JA (2006) The charisma of subgroups and the subgroups of CHARISMA. N Engl J Med 354: 1744–1746 | PubMed |
