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2005年
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Nature Physics 2, 19-20 (2006) | doi:10.1038/nphys201

超伝導

磁性同位体効果

通常の超伝導におけるフォノンの役割は、半世紀以上前に同位体置換によって初めて確認された。しかし、高温超伝導のメカニズムを明らかにすることは、ずっと難しい問題である。

1950年に報告された2つの重要な実験によって、通常の超伝導体における超伝導の起源が明らかになった1,2が、この結果はFröhlichによってほぼ同時期に予測されていた3。超伝導体の元素の一部を別の同位体に置換すると、転移温度に変化が見つかった。これは、超伝導に格子が関係していることを明らかに示していた。7年後、これらの先駆的な研究結果を基に、バーディーン、クーパー、シュリーファーが正確な微視的理論を考え出した4。1月号27ページで、寺嶋たちは磁性イオンの一部を別のイオンに置換することで生まれる別種の同位体効果を実証している5。その結果、高温超伝導は格子との相互作用ではなく磁性相互作用によって生まれることが示唆された。

銅酸化物超伝導体は非金属性のスペーサー層で隔てられた金属性のCuO2層(図1参照)でできている。フェルミ・エネルギー近傍の電子構造は銅のd軌道と酸素のp軌道の混合である単一のエネルギー・バンドからなっている。銅イオンを他のイオン(亜鉛、ニッケル、コバルト)に置換すると、超伝導特性が強い影響を受けることはよく知られている。しかし、高温超伝導体のクーパー対を不純物が壊すことが知られており、これは特異な結果ではない。他方では、置換は高温超伝導体の磁気的性質にも大きな影響を及ぼす。例えば、非弾性中性子散乱実験に見られる極めて顕著なスピン共鳴は、銅を亜鉛で置換すると大きく変化する6

図1.高温超伝導体のCuO2面。
 
青色の原子が銅イオン、緑色の原子が酸素である。実験では、磁性をもつ銅イオンが磁性をもたない亜鉛イオンあるいは磁性をもつニッケルイオン(赤色の原子)に置換された。これによって、非弾性中性子散乱によって測定された磁気励起スペクトルと角度分解光電子分光によって観察された電子のエネルギーと運動量の関係における異常が影響を受けた。したがって、磁性相互作用が実際にこのような物質における高温超伝導の原因である可能性があると推測される。

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このような結果の重要性を正しく理解するため、半世紀前の研究に戻る。超伝導を生み出すのと同じ電子−格子相互作用はエネルギー・バンドの分散(つまり、エネルギーに対する運動量の関係)にも影響を与える。1960年代初頭、トンネル測定によってこの「強結合」効果が明らかになり、通常の超伝導体の理論が決定的なものになった。50年後の現在、高温超伝導体に見られるよく似た強結合効果に関して、特に角度分解光電子分光によって直接測定されたエネルギーと運動量の関係について論争が起きている7。いくつかの光電子による研究を行うグループは、通常の超伝導体に関しては、これらの強結合の特徴は実際に格子との相互作用によるものであると主張している。一方で、磁性相互作用によるものと主張しているグループもある。特に彼らは、エネルギー分散に観測される「キンク」の原因はスピン共鳴であると考えている。

格子相互作用仮説は昨年発表された実験で検証されている8。この実験では、16Oを18Oに置換することで、キンクが移動した。これで論争が解決されただろうと思われるかもしれないが、この測定結果は多くの論議を呼んでいる。このため、研究者は第2の、つまり磁性の可能性を検討する気になっている。しかし、どうやって検証するのだろうか。上に述べたように、検証する方法の1つは、磁性体である銅イオンを他の種類のイオンに置換して、磁気的な挙動の変化と電子のエネルギー分散の変化との間に相関があるか否かを調べることである。

寺嶋たちが述べている5のはまさにこれである。銅を亜鉛で置換することによって、分散のキンクは(中性子散乱測定で見られるように)スピン共鳴が影響を受けるのとほぼ同じような影響を受けた。そして、ニッケルで置換するとキンクは幾分異なる影響を受けることがわかり、この相違は中性子散乱のデータにおける相違と相関があった。このように、寺嶋たちが報告した実験結果はキンクの原因がスピン共鳴であることの強力な証拠となる。もしそうならば、磁性相互作用が実際に高温超伝導の起源であると推測される。これらの結論に加えて、同様の結果が最近別の光電子研究グループによって報告されている9

参考文献8で報告されている実験結果と同様に、このデータは別の解釈ができる。数年前、スタンフォードのグループは、銅を亜鉛に置換したことによる光電子スペクトルへの影響を観察した10。しかしながら彼らの見解は、亜鉛置換は電荷の不均一性を高め、その結果観察された変化が起きたというものだった。とにかく、寺嶋たちが報告した「磁性同位体効果」はおそらく今後多くの論議を呼ぶことになり、この研究により魅力的な超伝導体の微視的理論に向けて、一歩近づいたかもしれない。

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References

  1. Reynolds, C. A. , Serin, B. , Wright, W. H. & Nesbitt, L. B. Phys. Rev. 78, 487 (1950). | Article | ISI | ChemPort |
  2. Maxwell, E. Phys. Rev. 78, 477 (1950). | Article | ISI | ChemPort |
  3. Frohlich, H. Phys. Rev. 79, 845?856 (1950). | Article |
  4. Bardeen, J. , Cooper, L. N. & Schrieffer, J. R. Phys. Rev. 108, 1175?1204 (1957). | Article | ISI | ChemPort |
  5. Terashima, K. et al. Nature Phys. 2, 27?31 (2006). | Article |
  6. Sidis Y. et al. Phys. Rev. Lett. 84, 5900?5903 (2000). | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  7. Norman, M. Nature 427, 692 (2004). | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  8. Gweon, G. H. et al. Nature 430, 187?190 (2004). | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  9. Zabolotnyy, V. B. et al. Preprint at <http://arxiv.org/abs/cond-mat/0508542> (2005).
  10. White, P. J. et al. Preprint at <http://arxiv.org/abs/cond-mat/9901349> (1999).

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