【ゲノミクス】チスイコウモリの特異な食餌をゲノムとマイクロバイオームが説明する
Nature Ecology & Evolution
2018年2月20日
ナミチスイコウモリは低栄養の食餌に適応しており、こうした適応によってさまざまな血液媒介性疾患にさられていることが、ゲノムと腸内マイクロバイオームの複合研究によって明らかになった。チスイコウモリのマイクロバイオームは、昆虫食、果実食、および肉食のコウモリとは全く異なることも示された。
血液のみを摂食する哺乳類はわずか3種で、ナミチスイコウモリ(Desmodus rotundus)はその中の1種である。血液は炭水化物やビタミン類の少ない低栄養の資源であり、血液媒介性疾患が潜んでいる場合もあることから、血液食は、他の摂食戦略とは異なる極端な進化的特殊化である。
Marie Zepeda Mendozaたちは、チスイコウモリのゲノムと糞便メタゲノム(コウモリの糞から回収した微生物のDNA試料)の塩基配列を合わせて解読することにより、このような食餌の特殊化がチスイコウモリとその腸内マイクロバイオームの両方にどのような影響を与えているのかを調べた。その結果、ゲノムの全体的なサイズは他の種のコウモリと近いものの、転位性遺伝因子(ゲノム中で移動するDNA配列)のコピー数が約2倍になっていることが分かった。こうした配列は、免疫応答やウイルス防御、脂質とビタミンの両方の代謝に関係するゲノム領域に認められた。
研究チームは、腸内マイクロバイオームの代わりに糞便メタゲノムを用いることで、他の哺乳類で疾患を引き起こすことが知られている280種以上の細菌を含め、チスイコウモリには非血液食の他のコウモリ種には見られない微生物の分類群および機能があることも突き止めた。以上のことから研究チームは、ゲノムと腸内マイクロバイオームの両方の分析によって、宿主種に影響を与える極端な食餌適応を全生物体レベルで研究するための枠組みが得られると論じている。
doi:10.1038/s41559-018-0476-8
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