Technical Report

がん:特定の膜分子を標的とする、がん細胞選択的なin vivo近赤外光免疫療法

Nature Medicine 17, 12 doi: 10.1038/nm.2554

がん治療の主要な3方式、つまり外科手術、放射線療法、化学療法は現代のがん治療の要である。これらの治療法の副作用を最小限にするため、武装抗体療法などの分子を標的とするがん療法が開発されてきたが、成果は限られている。今回我々は、新しい型の分子標的がん療法である光免疫療法(PIT)を開発した。この方法では、近赤外(NIR)光吸収性フタロシアニン色素IR700を用いた標的特異的な光感作物質を、上皮細胞増殖因子受容体を標的とするモノクローナル抗体(mAb)に結合させて用いている。mAb-IR700が結合した標的細胞にNIR光を照射すると、直後に細胞死が引き起こされた。また、in vivoで上皮細胞増殖因子受容体を発現する標的細胞にNIR光を照射すると、腫瘍の縮小が観察された。このmAb-IR700複合体は、細胞膜に結合させた場合に最も有効であり、結合していない場合には光毒性が生じなかったことから、PITの作用機序は従来の光力学的療法とは異っていると考えられる。標的選択能のあるPITによって、細胞膜に結合するmAbを用いたがん治療が可能になるだろう。

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