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ジャガーは戻ってくるか?

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2012.120806a

長い論争の末に、米国政府が近く保護生息地を指定する

ネコ科動物の中で、ジャガーはライオンとトラに次いで3番目に大きく、南北アメリカ大陸では最大で、かつては米国にも生息していた。18世紀と19世紀にはアリゾナ、ニューメキシコ、カリフォルニア、テキサスの各州で生息が確認され、ときにはノースカロライナ州や北はコロラド州でも見られた。

ジャガーの生息地は南へと追いやられ、現在はアルゼンチン北部からメキシコのソノラ砂漠にわたる地域に生息している。だが、米国南西部にも頻繁に入り込んでおり、一部の自然保護活動家は「重要生息地」を指定して保護すべきだと主張してきた。そして、長年の法的論争の末、米国魚類野生生物局(FWS)がこれに同意した。アリゾナ州フェニックスのFWS現地監督官Steve Spangleは「指定候補地をいくつか提案する計画ですが、具体的な場所や広さはまだ決まっていません」と言う。それでもFWSは7月には決定する予定だ。

ジャガーが重要生息地指定の対象に値するのかどうか。この問題は自然保護についてのより大きな議論を反映している。多くの生物種が姿を消しつつある中で、限られた保護予算の支出優先順位をどのようにつけるのか、という問題だ。

ジャガーを守る最良の方法は、国境の南、ジャガーが生息・繁殖しているメキシコ側の保護を手厚くすることだと多くの専門家は考えている。だが、生物多様性センターのMichael Robinsonは、米国内にジャガーを再び生息させることを目標にすべきだと言う。米国でジャガーが絶滅したのは、1960年代まで続いた政府の「肉食動物駆除計画」のもとで多数のジャガーが殺されたのが一因だ。現在だけでなく、過去の生息域に注目するのが重要だとRobinsonは主張する。

重要生息地が認定されても、面積はわずかにとどまりそうだ。4月にFWSの諮問委員会が作成した概要は、アリゾナ州の南東角とニューメキシコ州の南西角のごく一部を含む領域に絞っている。ニューメキシコ州のヒーラ国有林やアリゾナ州のモゴロン・リムなど、Robinsonが最重要の生息地とみている地域は無視された。

諮問委員会の共同責任者で野生ネコ科動物保護団体パンセラのHoward Quigleyは言う。「議論は数十年続く可能性があり、その間にジャガーは絶滅しかねません。まず重点地域を設けて、復活に向けた活動を始める必要があります」。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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