News

ケプラー、系外地球型惑星を発見

地球型惑星ケプラー10bの想像図。 Credit: NASA

米航空宇宙局が2009年に打ち上げた宇宙望遠鏡ケプラーは、今後数年内に、太陽系外にある岩石でできた地球型惑星を発見する可能性が最も高いと考えられている。観測チームの一員でサンノゼ州立大学(米国カリフォルニア州)のNatalie Batalhaは、1月の米国天文学会で、「岩石でできていることが確実な最小の太陽系外惑星を発見した」と発表した。

ケプラーの観測では天の川の1区画に狙いを定め、そこにある10万個を超える恒星を観測し、光度のわずかな周期的変化を探し出す。恒星の明るさが一時的に減少した場合、周りを回る惑星が恒星の前を繰り返し通過していることが多いのだ。

ケプラーがこれまでに報告した8個を含め、現在までに発見された数百個の太陽系外惑星のほとんどは、少なくとも海王星(直径は地球の4倍弱)程度の大きさがあり、多くが巨大ガス惑星だ。しかし天文学者たちは、ケプラーによる観測で、いつかは地球型惑星が見つかるだろうと期待している。そのうちのいくつかは、親星から適度な距離にあり、水が液体として存在し、生命が存在できるような環境を持つはずだ。

今回、観測チームは地球から173パーセク(約560光年;銀河規模の尺度ではかなり近い)離れた地点にある、太陽に似た恒星「ケプラー10」の周りを20時間で回る、「ケプラー10b」を見つけた。ケプラー10bの直径は、地球より40%大きいだけである。また、ハワイのマウナケア山のケック天文台での観測から質量が求められ、その値から密度は地球の1.6倍と推定され、ケプラー10bが岩の多い組成であることが示唆された。ただし、かなり高温であるため、生命は存在していないと考えられる。というのも、親星から250万キロメートルしか離れていないのだ。この距離は地球−太陽間の2%に満たず、表面温度はケイ酸塩岩も溶ける1800℃と推定される。実際には固い大地ではなく、溶岩の海になっていることは確実だ。

ケック天文台の天文学者たちは、ケプラー10bが親星に及ぼす引力の影響を観測し、その質量を求めた。一方、親星ケプラー10はケプラーの観測範囲で最も地球に近い星の1つだったので、観測チームは恒星内部を伝わる音波のために起こる星の光度のわずかな変化を記録できた。こうした音波の振動のタイミングから、親星の大きさに関する詳細な情報が得られた。これは、弓でこすられた弦の出す音から、演奏されている楽器がバイオリンかチェロかがわかるようなものだ。「惑星はあらゆる面で親星と密接に関係しており、親星の観測から惑星の重要な情報を得ることができます」とBatalhaは話す。Batalhaらは、親星の正確な直径から、ケプラー10bの大きさなどを同様の精度で知ることができた。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校(米国)の天文学者Greg Laughlin(今回の観測に加わっていない)は、「ケプラー10bの公転軌道は、岩石でできていると推定されている別の太陽系外惑星CoRoT-7b(2009年発見)の軌道と似ています」と指摘する。そしてこう語る。「今回の成果は、地球と似た大きさの太陽系外惑星を見つける技術が、近年めざましく進歩していることを物語っています。10年前、岩石でできた超高温のスーパーアース(巨大地球型惑星)が見つかるとは、誰も想像していなかったでしょう。ケプラーは公転周期がもっと長く、恒星から遠い軌道にある惑星も見つけることができます。今後は、観測時間が増えるとともに、もっと温度が低くて小さな惑星が発見されるでしょう」。

観測チームは今年2月に、さらに400個の惑星候補のデータを発表する。Batalhaは、「観測チームは興奮しています。ケプラーが発見した惑星の数が増え、岩石型だけでなくガス型も含めた太陽系外惑星について、初めて具体的な頻度が得られる見込みだからです。これまでも、数多くの太陽系外惑星が発見されてきましたが、今後、さらにたくさん見つかるだろうと考えています」と話している(編集部註:NASAは2月2日、ケプラーがこれまで発見した系外惑星候補1235個のうち、54個は親星から適度な距離にあるため液体の水が存在する可能性があり、そのうち5個は地球とほぼ同じサイズであると発表した)。

翻訳:新庄直樹 再構成:編集部

Nature ダイジェスト Vol. 8 No. 3

DOI: 10.1038/ndigest.2011.110305

原文

Space scope finds scorched super-Earth
  • Nature (2011-01-13) | DOI: 10.1038/469143a
  • Adam Mann