Where I Work

Chuchu Huang

私は発酵科学者で、マイコリーナ(Mycorena)というバイオテクノロジー企業で、バイオリアクターという大きなタンクを用いてマイコプロテイン製造手順の開発・最適化を行なっています。写真は、小型装置でプロセスを研究しているところです。異なる種類の栄養素を使ったり、攪拌速度を変えて気流を調節したり、pHを調整したりすることで、バイオリアクターのパラメーターを変えることができます。

Credit: Nature by FRANCESCO RUCCI FRANCESCO MARINELLI/contrasto

マイコリーナは菌類由来のビーガン向けのタンパク質「マイコプロテイン」を生産する会社で、設立は2017年。スウェーデンのイェーテボリを拠点としています。我が社のマイコプロテインは、ビーガンレザーから動物飼料や代替肉まで、さまざまな製品の製造に利用できます。プロミック(Promyc)という代替肉製品は、既にスウェーデンの食料品店やレストランで販売されており、EU内の他の地域での販売に向けて他社と提携しているところです。

マイコプロテインの見た目は、森に生えているキノコとは全く違います。私たちが育てているのは、キノコを構成する「菌糸」という微細な繊維状のものです。ちなみに動物の筋肉も繊維状の細胞からできています。菌糸は、栄養分は豊富に含んでいますが味はないので、好きに味付けをすることができます。このようにして菌類から食用タンパク質を製造することで、従来の方法で食肉を生産するよりも二酸化炭素の排出量を少なくすることができます(2022年8月号「菌類由来の代替タンパク質の環境的利益」参照)。

私はずっと菌類を研究してきました。さまざまな微生物が相互作用する仕組みの解明に取り組み、2021年にコペンハーゲン大学(デンマーク)で博士号を取得しました。菌類は驚くべき生物です。細菌のような微生物では、同じ種であれば異なる株であってもよく似ています。ところが菌類は、同じ種であっても全く違った振る舞いをすることがあり、その理由は完全には分かっていません。

マイコリーナ社は現在、スウェーデンのファルケンベリに最初の工場を建設中です。私たちは、菌類発酵技術をさらに普及させ、食品産業をより持続可能で多様なものにする助けになりたいと願っています。マイコプロテインを食品業界の他の分野、例えば食品の3D印刷などに応用することも考えています。多くの困難に直面するかもしれませんが、それが私たちの目標です。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 2

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230252

原文

‘Fungi are amazing’: turning mushrooms into vegan leather and meat
  • Nature (2022-09-12) | DOI: 10.1038/d41586-022-02922-2
  • Linda Nordling