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コウモリからヒトへウイルス伝播が繰り返されるわけ

ヘンドラウイルスの自然宿主であるクロオオコウモリ(Pteropus alecto)。 Credit: WITH PERMISSION FROM PAT JONES

「ねえ、みんな。翼を広げて中を見せてくれない?」オーストラリアのシドニー王立植物園で、Peggy Ebyはハイガシラオオコウモリ(Pteropus poliocephalus)のねぐらを見上げながら、そう話し掛けた。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア・シドニー)の野生動物生態学者であるEbyは、授乳中の雌とその新生仔を探しているのだが、雲り空のために仔は母親の翼の下に潜り込んだままなのだ。彼女は、約25年にわたってオーストラリアに生息するオオコウモリ類を研究してきた。双眼鏡を手にEbyが調べているのは、離乳間近の仔を持つ授乳中の母コウモリの数だ。この状態の雌の割合は、コウモリが栄養ストレスを受けているかどうかの代理指標となり、そうしたストレスは、母コウモリの割合の減少やヒトに害を及ぼし得るウイルスの排出と関連付けられている。

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翻訳:小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 2

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230213

原文

Why do bat viruses keep infecting people?
  • Nature (2022-11-16) | DOI: 10.1038/d41586-022-03682-9
  • Smriti Mallapaty

参考文献

  1. Eby, P. et al. Nature 613, 340–344 (2023).
  2. Becker, D. J., Eby, P., Madden, W., Peel, A. J. & Plowright, R. K. Ecol. Lett. 26, 23–36 (2022).