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水滴と水蒸気を分離する設計による高温表面のスプレー冷却

Jiang2らの革新的な表面設計は、1000℃以上までライデンフロスト効果を抑制し、冷却効果を維持できる。これにより、原子力発電における冷却がより安全で効果的なものになるかもしれない。写真は、チェコのボフニチェ原子力発電所の冷却塔。 Credit: DanielPrudek/iStock / Getty Images Plus/Getty

熱いフライパンの上に水を数滴振りまくと、水滴はすぐに沸騰してなくなる。しかし、それよりもはるかに高温のフライパンに同じく水滴をかけると、生じた水蒸気が断熱層となって表面上で水滴が浮くため、すぐ蒸発せずに残り続ける。この現象は、ライデンフロスト効果と呼ばれている1。こうした液体の挙動は人目を引くかもしれないが、強力な水冷を要する用途において、悲惨な結果をもたらす。例えば、原子力発電所では、ライデンフロスト効果に起因する非効率的な冷却がメルトダウンにつながるおそれがあるのだ。今回、香港城市大学(中国)のMengnan Jiangら2は、この効果を阻害することで1100℃を超える温度でスプレー冷却を可能にする表面設計を、Nature 2022年1月27日号568ページで報告した。この温度は、他の方法よりも600℃も高い。

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翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220443

原文

Hot surfaces cooled by isolating steam from spray
  • Nature (2022-01-27) | DOI: 10.1038/d41586-022-00123-5
  • James C. Bird
  • James C. Birdはボストン大学(米国マサチューセッツ州)に所属。

参考文献

  1. Leidenfrost, J. G. De aquae communis nonnullis qualitatibus tractatus (Ovenius, 1756).
  2. Jiang, M. et al. Nature 601, 568–572 (2022).
  3. Bergman, T. L., Incropera, F. P., DeWitt, D. P. & Lavine, A. S. Fundamentals of Heat and Mass Transfer 8th edn, 598–602 (Wiley, 2017).
  4. Kwon, H., Bird, J. C. & Varanasi, K. K. Appl. Phys. Lett. 103, 201601 (2013).
  5. Farokhnia, N., Sajadi, S. M., Irajizad, P. & Ghasemi, H. Langmuir 33, 2541–2550 (2017).