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DNA組換えのDループの謎を解く

DNAの二本鎖が共に切断された場合、どんな塩基が欠失したのか分からないため、修復に工夫が必要になる。それを担うのが相同組換え機構だ。その初期段階の過程が、中間体の構造から明らかになった。 Credit: Firstsignal/iStock/Getty

我々生物の染色体は、常に、ゲノムの完全性が損なわれかねないようなDNA損傷を与える、紫外線や化学物質などの連続砲火にさらされている1,2。相同組換えは進化的に保存されたDNA修復法で、DNA分子の鎖が2本とも切れるという、特に危険な種類の損傷を直すことができる3,4。相同組換えが必要不可欠であることは、BRCA1やBRCA2といった組換え機構で機能するタンパク質の欠損と関係する、がんや好発がん性の症候群からもよく分かる5。このほど、スローン・ケタリング記念がんセンター(米国ニューヨーク)のHaijuan Yangらは、Nature 2020年10月29日号801ページに論文6を発表し、RecAというタンパク質が細菌の相同組換え過程初期の重要な段階を進める機構を明らかにする構造データを報告した。

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翻訳:小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2021.210135

原文

Demystifying the D-loop during DNA recombination
  • Nature (2020-10-29) | DOI: 10.1038/d41586-020-02831-2
  • Upasana Roy & Eric C. Greene
  • Upasana Roy & Eric C. Greeneは、ともにコロンビア大学(米国ニューヨーク)に所属。

参考文献

  1. Hoeijmakers, J. H. J. Nature 411, 366–374 (2001).
  2. Hoeijmakers, J. H. J. N. Engl. J. Med. 361, 1475–1485 (2009).
  3. Mehta, A. & Haber, J. E. Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 6, a016428 (2014).
  4. Kowalczykowski, S. C. Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 7, a016410 (2015).
  5. Prakash, R., Zhang, Y., Feng, W. & Jasin, M. Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 7, a016600 (2015).
  6. Yang, H., Zhou, C., Dhar, A. & Pavletich, N. P. Nature 586, 801–806 (2020).
  7. Chen, Z., Yang, H. & Pavletich, N. P. Nature 453, 489–494 (2008).
  8. Xu, J. et al. Nature Struct. Mol. Biol. 24, 40–46 (2017).
  9. San Filippo, J., Sung, P. & Klein, H. Annu. Rev. Biochem. 77, 229–257 (2008).
  10. Heyer, W.-D. Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 7, a016501 (2015).