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新型コロナウイルス研究注目の論文(3〜4月)

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200612

原文:Nature (2020-05-22) | doi: 10.1038/d41586-020-00502-w | Coronavirus research updates

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と、その感染症であるCOVID-19に関する文献をNature が精査し、主要な論文をまとめた(2020年3〜4月)。5月分はこちら

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EMARYS/ISTOCK/GETTY IMAGES PLUS/GETTY

4月30日

子どもも新型コロナウイルス感染症に罹患する

中国・深圳の人々を対象とする調査によると、SARS-CoV-2感染者との濃厚接触により感染する可能性は、子どもも大人と同程度という。

ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院(米国メリーランド州ボルチモア)のJustin Lessler、深圳疾病管理予防センターのTiejian Fengらは、約400人のCOVID-19患者と、感染者の「濃厚接触者」1300人を分析した(Q. Bi et al. Lancet Inf. Dis. http://doi.org/dtd7; 2020)。その結果、10歳未満の濃厚接触者の7%がSARS-CoV-2に感染していたことが明らかになった。これは濃厚接触者の集団全体における感染者の割合とほぼ同じである。この研究は、プレプリントとして3月27日に最初にネット上で公開された(http://doi.org/dpf9)。

研究チームは、陽性となった濃厚接触者の80%は、最初の感染者のうちのわずか9%から感染したことも明らかにした。こうした「スーパースプレッディング」現象は、「COVID-19の大規模クラスター」を生じる可能性があると彼らは述べている。

4月29日

新型コロナウイルスは宿主の免疫防御機構を乗っ取って侵入している可能性がある

SARS-CoV-2は、ウイルスタンパク質 (赤) を標的細胞表面のACE2タンパク質 (青) に結合させることにより、標的細胞に侵入する。 | 拡大する

Juan Gaertner/SPL

SARS-CoV-2がヒト細胞に侵入する際には、ウイルスタンパク質の1つが、ヒトの多くの臓器の細胞に見られるACE2というタンパク質と結合した後に侵入することが分かっている。しかし、この重要な相互作用についてはほとんど解明されていない。

詳細を明らかにするため、ハーバード大学医学大学院(米国マサチューセッツ州ボストン)とマサチューセッツ工科大学(MIT;米国ケンブリッジ)のAlex Shalek、ブロード研究所(米国ケンブリッジ)のJose Ordovas-Montanesらは、インフルエンザに感染した人の気道の細胞を調べた(C. G. K. Ziegler et al. Cell http://doi.org/ds9j; 2020)。インフルエンザウイルスもSARS-CoV-2も気道の細胞に感染することが分かっている。

研究チームは、インフルエンザに感染している人では、通常はウイルスを撃退するのに役立つインターフェロンというシグナル伝達分子が、ACE2タンパク質をコードする宿主遺伝子のスイッチを入れていることを発見した。この結果は、ウイルスの攻撃に対する体の防御機構がACE2の遺伝子を活性化させることを示唆している。

4月28日

「乾式ぬぐい液検査」が検査薬不足の回避策に

SARS-CoV-2の大規模な遺伝子検査を実施できない理由の1つに、ぬぐい液を採取した綿棒を保管し、そこからウイルスRNAを抽出するための溶液が不足していることがある。この問題を解決するため、ワシントン大学(米国シアトル)のLea StaritaとJay Shendureが率いるチームは、大幅に不足している溶液を使用せずに綿棒に含まれるウイルスRNAを検出する手法を開発した(S. Srivatsan et al. Preprint at bioRxiv http://doi.org/ds6k; 2020;投稿前の査読なし)。

この「抽出を必要としない乾式ぬぐい液検査」では、SARS-CoV-2への感染が確認されている患者から採取した11検体中9検体でウイルスRNAを正しく検出することができた。従来の抽出法では、11検体中8検体でしか陽性の結果が得られなかった。研究者らは、このプロトコルは大幅なスケールアップを可能にし、患者自身が採取した検体を使って集中検査室で遺伝子検査を行えるようになるかもしれないと言う。

咽頭ぬぐい液を採取する準備をしている医療関係者。 | 拡大する

Mohd Rasfan/AFP/Getty

4月27日

病院のトイレは空気中のウイルスRNA濃度が高くホットスポットになり得る

SARS-CoV-2のRNAは空気中を伝わることができ、感染者の呼気中の微粒子によって拡散する可能性がある。

武漢大学(中国)のKe Lanらは、COVID-19患者を治療している2つの病院でエアロゾル(空気中の微粒子)トラップを設置し、エアロゾル中のSARS-CoV-2ウイルスRNAの濃度を調べた(Y. Liu et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-020-2271-3; 2020)。

その結果、空気中のウイルスRNA濃度が高かったのは、患者用の仮設トイレや、医療スタッフの更衣室などであった。医療スタッフの部屋を消毒した後にはウイルスRNAは検出されなくなり、よく換気されている病棟ではウイルスRNAは低濃度か検出不可能なほど低かった。

研究チームは、空気中にウイルスRNAが存在することは、SARS-CoV-2がエアロゾルを介して拡散する可能性があることを示唆しており、定期的な消毒やこまめな換気などの対策がウイルスの拡散抑制に役立つ可能性があると述べている(https://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/research/13301参照)。

4月24日

唾液が検査数不足の解決策になる可能性

SARS-CoV-2に感染しているかどうかを唾液で正確に調べられることが明らかになり、より安全に、より幅広い人々にウイルス検査を実施できるようになることが期待される。

SARS-CoV-2への感染を調べる標準的な検査では、長い綿棒を喉の奥に擦り付ける必要がある。しかし、そのような綿棒は供給が不足している上、綿棒の刺激で咳やくしゃみが出て、大量のウイルス粒子が撒き散らされる恐れもある。

エール大学公衆衛生大学院(米国コネチカット州ニューヘイブン)のAnne Wyllieらは、入院中のCOVID-19患者の唾液と喉の両方から検体を採取した(A. Wyllie et al. Preprint at medRxiv, http://doi.org/ggssqf; 2020; 投稿前の査読なし)。このチームの検査では、一部の患者の鼻咽頭ぬぐい液検体からはウイルスが検出されなかったが、同じ患者の唾液検体からはウイルスが検出された。鼻咽頭ぬぐい液検査の結果は陰性で体調不良もなかったが、唾液検査により感染が確認された医療従事者も2人いた。

4月23日

小さな町の集中検査で多数の隠れ感染が見つかる

イタリアの小さな町で実施された検査から、SARS-CoV-2感染者の多くが無症状であることが明らかになった。

2020年2月21日、イタリアのヴォーという町で国内初のCOVID-19による死亡例が報告されたことを受け、当局は町内の移動を禁止し、そこでの公共サービスや商業活動を2週間停止した。ロンドン大学インペリアルカレッジ・(英国)のAndrea Crisantiらは、ヴォーの封鎖の開始時と終了時にほとんど全ての住民から鼻咽頭ぬぐい液を採取し、ウイルスRNAを調べた。

調査の結果、SARS-CoV-2に感染していた町民の約43%が、発熱も、その他の症状も報告していなかったことが明らかになった(E. Lavezzo et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/ggsmcj; 2020; 投稿前の査読なし)。研究者らは、症状を報告した人と報告しなかった人のウイルス量(潜在的な感染性)に統計学的に有意な差は見られなかったとしている。

著者らは、無症状者と発症前の感染者はSARS-CoV-2の伝播に重要な役割を果たしており、厳密なソーシャルディスタンス措置を取らないと制御が困難になると述べている。

4月22日

ワクチン候補の初期段階の動物実験に成功

実験的なワクチンがSARS-CoV-2感染からサルを守った。

北京協和医学院(中国)のChuan Qinが率いるチームは、化学的に不活化したSARS-CoV-2粒子からなるワクチンをアカゲザル(Macaca mulatta)に3回投与した(Q. Gao et al. Preprint at bioRxiv http://doi.org/dskt; 2020; 投稿前の査読なし)。その後、8匹のサルを意図的にウイルスに曝露させた。

曝露から7日後、高用量のワクチンを投与された4匹のサルはいずれも、喉でも肺でもウイルスが検出されなかった。低用量のワクチンを投与されたサルは、コロナウイルスに感染した徴候のいくつかを示したものの、ウイルス濃度は、ワクチンを投与せずにウイルスに曝露させたサルよりもはるかに低かった。このワクチンを開発している企業は、2020年4月にヒトでの安全性試験を開始する承認を得ている。

4月20日

香港はいかにして、厳しい活動制限なしに新型コロナの感染拡大を食い止めたのか

香港は他の国々のような厳しい方策に頼ることなく、徹底的な監視、隔離、ソーシャルディスタンシング(社会的距離確保施策)によりSARS-CoV-2の拡散を減速させることができた。

2020年1月にCOVID-19のアウトブレイクが始まった武漢では、感染拡大を抑え込もうとする当局が、人々が市外に出ることを禁止した。これに対して香港では、広範な検査、感染者と接触した人々の隔離、および学校閉鎖をはじめとする社会的距離を取る施策などからなるプログラムが採用された。香港大学のPeng Wuらが3月上旬に住民に対する調査を行ったところ、99%が公共の場ではマスクを着用していると答え、85%が人ごみを避けていると答えた(B. J. Cowling et al. Lancet Public Health http://doi.org/dsfw; 2020)。

香港市民の行動変容と政府の施策の組み合わせにより、3月末までの期間、ウイルスの感染拡大は比較的抑えられていたことが明らかになった。

4月17日

ウイルスのスパイクタンパク質に基づくワクチンは有望

SARS-CoV-2タンパク質の重要な部分が、安全で効果的なワクチンの基礎となる可能性がある。

SARS-CoV-2粒子の表面にはとげ状の「スパイクタンパク質」がある。このスパイクの受容体結合ドメインと呼ばれる部位は、多くのヒト細胞の表面にある分子を認識して結合する。ウイルス粒子はこうしてヒト細胞内に侵入する。

スクリプス研究所(米国フロリダ州ジュピター)のHyeryun ChoeとMichael Farzanらは、SARS-CoV-2のスパイク中の結合ドメインの断片を使って、ラットを免疫した(B. D. Quinlan et al. Preprint at bioRxiv, http://doi.org/ggrs5t; 2020)。ラットの免疫系はこれに反応し、SARS-CoV-2を認識して細胞への感染を防ぐことができる抗体を作った。

ワクチンの安全性に関する主要な懸念として、抗体により宿主細胞がコロナウイルスに感染しやすくなるのではないかと言われているが、さらなる実験により、SARS-CoV-2についてはその可能性は低いことが示唆された。

4月16日

アイスランドに新型コロナウイルスを持ち込んだのはスキー愛好家たち

アイスランドにSARS-CoV-2を運んだのは、アルプスでのスキー休暇から帰国した人々だった。

デコード・ジェネティクス-アムジェン社(deCODE Genetics-Amgen;アイスランド・レイキャビク)のKari Stefanssonらは、アイスランド住民の中で中国への旅行者などでSARS-CoV-2への曝露リスクが高い人を対象に、2020年1月下旬からウイルス検査(RT-PCR法)を開始した(D. F. Gudbjartsson et al. N. Engl. J. Med. http://doi.org/ggr6wx; 2020)。4月4日までに検査を受けた9199人のうち、約13%がウイルスに感染していた。研究チームは陽性者から採取したウイルスRNAについて塩基配列解読を行い、いくつかの系統はオーストリアかイタリアに起源を持つと考えられることを明らかにした。どちらも、アルプス山脈のスキーリゾートがある国だ。

研究チームは、無作為に選んだ2000人以上を対象とする検査も3月後半に行い、ウイルス感染者はそのうちの0.6%だった。研究チームはこの分析結果について、アイスランドが検査と接触者の追跡、隔離により、ウイルスの封じ込めに成功したことを示すものであるとしている。

4月15日

ソーシャルディスタンシングの緩和で新型コロナウイルスの新たな感染拡大が起こる恐れ

現在のソーシャルディスタンシング(社会的距離確保施策)が緩和されるとCOVID-19患者が急増する可能性が高いことがモデル研究により示された。

ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(米国マサチューセッツ州ボストン)のYonatan Grad、Marc Lipsitchらは、SARS-CoV-2とは別のベータコロナウイルスに関する米国でのデータを基に、米国のような温暖な地域でのパンデミック後のSARS-CoV-2伝播を予測するモデルを開発した(S.M. Kissler et al. Science http://doi.org/drz3; 2020)。

研究チームはこのモデルから、SARS-CoV-2にもインフルエンザウイルスなどのように特に効率よく伝播する季節がある場合には、社会的距離確保施策が終わった後のCOVID-19患者数のピークは、この措置を一度もとらなかった場合のピークよりも大きくなる可能性があることを見いだした。これは、社会的距離確保施策によりウイルスに感染しやすい人の割合が高いままになっているため、2020年後半にウイルスの伝播性が高まった場合には患者数が急増するというわけである。

研究チームはまた、SARS-CoV-2に対するヒトの免疫が数年で弱まる場合には、冬場に繰り返しアウトブレイクが発生する可能性が高いとしている。

4月15日

一般的なシーケンシング技術で大規模診断を高速化できる可能性

標準的なゲノム解析法では、1日に数万点のDNA試料の塩基配列解読が可能だ。これをSARS-CoV-2の検出に用いる方法が提案された。

ブロード研究所(米国ケンブリッジ)のJonathan Schmid-Burgkのチームが提案するSARS-CoV-2検査プロトコルでは、綿棒に付着したままの各検体にRT-LAMP法を用いて生物学的バーコードとなるユニークなDNA配列のタグを付けるが、この際、検体中のRNAの抽出は不要だ(J. L. Schmid-Burgk et al. bioRxiv, http://doi.org/drzc; 2020)。その後、世界中の研究室で一般的に使用されている高速シーケンサーを用いることで、一度に10万点のDNA試料を分析できるようになる。

著者らは、臨床検体でこの手法の有効性が確認されれば、塩基配列解読を行う各拠点で1日当たり数百万点の検体を分析できるようになると予想している。

4月10日

ウイルス酵素の構造が指し示す治療薬の可能性

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Z. Jin et al. Nature

SARS-CoV-2の複製に関与するタンパク質の1つ、メインプロテアーゼという酵素の結晶構造が詳細に解明された。

2020年2月、上海工科大学(中国)のHualiang Jiang、Zihe Rao、Haitao Yangらは、タンパク質データバンクにこのプロテアーゼの構造を登録し、以来、この酵素を阻害する化合物を探し求めてきた(Z. Jin et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-020-2223-y; 2020)。研究チームが1万以上の化合物をスクリーニングした結果、この酵素を阻害する化合物がいくつか見つかり、その中でもヒトで安全性が試験済みのエブセレン(ebselen)には強力な抗ウイルス活性があることが分かった。

SARS-CoV-2のプロテアーゼにはくぼみが1つあり、酵素阻害作用のある化合物はそこに入り込むことで作用する。他のコロナウイルスのプロテアーゼにも同様のくぼみがあることから、こうした単一の化合物が各種のコロナウイルスによって引き起こされる広範な疾患の治療に役立つのではないかという期待が高まっている。

4月8日

ウイルス量は発症時に急増する

2つの独立の研究チームによると、COVID-19患者のウイルスRNA濃度は症状が出始めた直後に最も高くなるという。

香港大学深圳病院(中国)のKwok-Yung Yuenらは、SARS-CoV-2に感染した23人の咳から採取した唾液検体を分析した。研究チームは、研究参加者のウイルス濃度は最初に体調不良を感じてから間もなくピークに達し、ピークから約1週間後に低下し始めることを発見した。

体内で検出されるウイルスRNAの量が多いほど、咳やくしゃみの際に排出される量は多くなる。研究チームによれば、発症時に検出されるSARS-CoV-2粒子の濃度の高さは、比較的軽症であっても、ウイルスが人と人の間で容易に伝播し得ることを示唆しているという(K. K.-W. To et al. Lancet Infect. Dis. http://doi.org/ggp4qx; 2020)。

この結果は、18人のCOVID-19患者の鼻咽頭ぬぐい液を分析した別の研究の結果とも一致している。症状のある17人の患者におけるウイルスRNAの濃度は、無症状の患者1人のそれとほぼ同じであった(L. Zou et al. N. Engl. J. Med. http://doi.org/ggmzsp; 2020)。

しかし別の研究では、入院時に軽症だったCOVID-19患者は、より重症だった患者に比べてウイルスRNAの濃度がはるかに低いという結果が出ている(Y. Liu et al. Lancet Infect. Dis. http://doi.org/dqrr; 2020)。南昌大学第一附属病院(中国)のWei Zhang、香港大学のLeo Poonらは、この研究から、ウイルスRNAの濃度に基づき患者が重症化するかどうかを予測できる可能性が示唆されるとしている。

4月7日

新型コロナウイルス検査の比較から、検査間に微妙な違いがあることが判明

医師たちは患者がSARS-CoV-2に感染しているかどうかを判断するために、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)と呼ばれる検査を使用している。エール大学公衆衛生大学院(米国コネチカット州ニューヘイブン)のNathan Grubaughが率いるチームは、広く利用されている9種類の検査を比較した結果、全ての検査で確実にウイルスを検出できることを見いだした(C. B. F. Vogels et al. Preprint at medRxiv https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.20048108v1; 2020)。

しかし研究者らは、検体中の低濃度のウイルスの検出については、米国疾病予防管理センター(CDC)、香港大学、シャリテ・ベルリン医科大学(ドイツ)がそれぞれ開発した検査を含むいくつかの検査が最高の性能を示すことも見いだした。

4月5日

新型コロナウイルスと近縁のウイルスを持つコウモリ

現在パンデミックを引き起こしているSARS-CoV-2と近縁のウイルスは、おそらく何十年も前からキクガシラコウモリの間に広がっていて、種の壁を越えてヒトに感染する準備をしていた。

グラスゴー大学(英国)のDavid Robertsonらは、SARS-CoV-2やSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスを含む68種類のコロナウイルスのRNAを分析した(M. F. Boni et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.03.30.015008; 2020) 。分析の結果、キクガシラコウモリ(Rhinolophus spp.)が、SARS-CoV-2のようにヒトに感染できる系統のウイルスを多数保持していることが明らかになった。研究チームは、SARS-CoV-2の祖先は、近縁のコウモリウイルスRaTG13から40〜70年前に分岐したと推定している。この2つのウイルスは遺伝学的にはよく似ているが、RaTG13はヒトには感染しない。

今回の分析は、この系統のウイルスが種の壁を越えてコウモリからヒトに直接感染する準備ができていることも示唆している。しかしSARS-CoV-2は、コウモリからヒトに直接感染したのではなく、ヒトが曝露する機会が多い別の生物に先に感染した可能性もある。

4月3日

マスクの着用で新型コロナウイルスの拡散を抑えられる可能性がある

サージカルマスク(医療用マスク)で呼吸器飛沫中の季節性コロナウイルスの拡散を効果的に阻止できることが報告された。この研究は、SARS-CoV-2の伝播も阻止できる可能性を示唆している。

季節性コロナウイルスは風邪の原因の1つである。香港大学のBenjamin Cowlingらは、季節性コロナウイルスに感染した被験者に密閉したブース内で空気中の粒子を捕集する装置(Gesundheit-II)に向かって呼吸をしてもらうことで検体を採取し、呼気中のウイルス量を測定した(N. H. L. Leung et al, Nature Medicine. https://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2; 2020)。

実験の結果、マスクを着用していない被験者が排出した大きめの飛沫と「エアロゾル」と呼ばれる細かい飛沫の両方で、コロナウイルスRNAが検出された。マスク着用の場合、両タイプの飛沫中に検出されるウイルスRNA量が減少した。大きめの粒子はくしゃみや咳によって運ばれるのに対し、直径5μm未満のエアロゾル飛沫は呼気で拡散し得る。

研究チームは、サージカルマスク着用で、季節性コロナウイルスだけでなくインフルエンザの伝播も減らすことができるとしている(https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13305参照)。

4月1日

リャマ由来の抗体が新型コロナウイルスとの戦いに役立つ

リャマ(Lama glama)由来の抗体が、ヒトに感染するいくつかのコロナウイルスとの戦いに役立つ可能性がある。

VIB生命科学研究所(ベルギー・へント)のBert SchepensとXavier Saelens、テキサス大学オースティン校(米国)のJason McLellanが率いるチームは、コロナウイルスが細胞内に侵入する際に用いる「スパイク」タンパク質と結合する2つのリャマ由来抗体を分離した(D. Wrapp et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.03.26.010165; 2020)。1つの抗体は中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるコロナウイルスを中和し、もう1つの抗体はSARSの原因となるコロナウイルスを除去した。

リャマ由来SARS抗体をヒト由来抗体と融合させることで、SARS-CoV-2を中和するハイブリッド抗体が得られた。実験データは、こうした抗体が新型コロナウイルスとの戦いに有用であることを示唆している。

3月30日

重篤な患者が回復者の血液投与を受けて軽快

2つの独立の研究チームがCOVID-19の重症患者に回復者の血液を輸血したところ、顕著な改善が見られた。

両チームはCOVID-19から回復した人々の血液から抗体を含む血漿を抽出した。

混合ワクチン国家工程技術研究センター(中国・武漢)のXiaoming Yangらは、この血漿を10人の重症患者に投与した。投与から6日目までに、10人中7人でSARS-CoV-2が検出できないレベルまで減少していた。血漿の投与により重篤な副作用を経験した患者はいなかった(K. Duan et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/dqrs; 2020)。

深圳第三人民病院(中国)のLei Liuが率いるグループは、回復者の血漿を5人の「重篤な患者」に投与した(C. Shen et al. J. Am. Med. Assoc. http://doi.org/dqn7; 2020)。その結果、5人全員の症状が軽快し、血漿の投与から10日以内に3人の患者が人工呼吸器を必要としなくなった。

他の研究者も、感染者に直接曝露してきた医療従事者の治療のために、このような輸血を試してみたいと考えているという。

3月27日

ウイルスタンパク質が治療薬の可能性を示唆

SARS-CoV-2の影響を受けるヒトタンパク質のリストは、感染者に提供できる可能性のある治療薬の指針となる。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)のNevan Kroganが率いるチームは、ヒト細胞を改変して、コロナウイルスが作る26種類のタンパク質のうちの1つを産生するようにした(D. E. Gordon et al. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.03.22.002386; 2020)。これにより研究者らは、コロナウイルスタンパク質と物理的に相互作用するヒトタンパク質を同定することが可能になった。

著者らは、ヒトタンパク質とウイルスタンパク質の間の332の相互作用のうち、既存薬や候補薬が阻害できる可能性のある67の相互作用を同定した。研究チームと共同研究者らは現在、これらの化合物のいくつかの抗ウイルス活性の試験を進めており、他の研究者にも同様の試験を行うように促している。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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