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うそ発見AI

最近、スペイン国家警察に新メンバーが加わった。「ベリポル」という人工知能(AI)ツールだ。偽の盗難届を嗅ぎつける初のテキストベースシステムで驚くほど正確だという。

Miguel Camacho Colladosは数年前にグラナダで警部として勤務していたとき、後にでっち上げと判明する盗難届の多さに閉口した。「多くの同僚が起こってもいない事件の捜査に多くの時間を無駄にしていました」と、現在はスペイン内務省に在籍しているCamacho Colladosは言う。

人々はさまざまな理由で盗難届を捏造する。何か貴重な物を紛失したことを家族や友人に明かさずに済まそうとする人もいれば、保険金をだまし取ろうとする輩もいる。それらを見つける唯一の方策は熟練の警察官に頼んで疑わしい報告を調べてもらうことだったが、この方法が常に有効とは限らない。そこで数学の専門教育を受けた経歴のあるCamacho Colladosは他の科学者と共に、盗難届の言葉遣いを精査することで捏造を見つけ出すコンピューターシステムを設計した。

チームはベリポルを1122件の捜査済み盗難届(つまり窃盗犯の有罪が確定したか届出人が事件の捏造を告白したもの)に基づいて訓練した。続いて、659件のサンプル盗難届が本物か捏造かをどれだけ正確に判別できるか、2人の専門捜査官と比較した。ベリポルの成績は警官をそれぞれ15%と20%上回った。2018年6月のKnowledge-Based Systems に報告されたこの結果は、人々が警察にどのように嘘をつくかについても理解をもたらした。例えば、捏造盗難届には特定の手口が記述される傾向にある(賊はたいていヘルメットをかぶり、背後から襲ってきたなど)。また、文が比較的短く、実際の事件に関する情報を欠いている。

ベリポルは既にスペイン中に展開されつつある。2017年6月にムルシア市とマラガ市で行われたテストでは、わずか1週間でそれぞれ25件と39件の強盗事件捏造を検出した。これに対し過去10年間の同じ6月に検出された捏造件数はそれぞれ3件と12件だった。

Camacho Colladosは押し込み強盗や自動車泥棒など捏造される例の多い他の犯罪でもベリポルを判定に使えるだろうと期待している。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 3

DOI: 10.1038/ndigest.2019.190305a