Editorial

科学雑誌ネイチャーに関する俗説と真実

俗説1 プレプリント論文をNatureに投稿すると審査が免除される 誤り

社説で何度も説明しているが、プレプリントは学会発表と同じ扱いというのが、ここ20年以上にわたるNatureの方針だ。学会発表は研究者間のコミュニケーションであり、非公式のフィードバックを活発に行うことは、論文の質の向上に役立つと考えている。

俗説2 査読過程は秘密裏に行われる必要があるため、NatureとNature関連誌は、査読依頼を受けた年長の研究者が職場の後進にそれを手伝わせることを望んでいない 誤り

我々は、大学院生や博士研究員が経験を積む場を提供したいと考えており、しかるべき監督の下であれば、そうした関与を積極的に奨励している。その場合は、査読に協力した若手研究者の氏名を明記してほしい。我々は、その者の功績を認め、その後の論文では直接助言を求める可能性もある。

俗説3 査読者が論文の誌上掲載を拒否できる ただし、専門的な事項に限られる

論文の重要性を評価する際、査読者の下した評価に影響力があることは確かだ。しかし、Natureに掲載する論文を選定するのが編集者であることは揺るがない。我々は、専門的な事項に関する査読者のコメントには耳を傾けるが、誌上掲載の妥当性に関しては査読者の勧告に反対する権利を有している。

俗説4 Natureが投稿論文の査読や出版を決定する際、著者が誰であるか(国籍と所属機関を含む)に影響される 誤り

我々は、初めて著者となった研究者の論文を出版することが多い一方で、非常に高名な研究者の論文については、重要性に欠けるという純粋な編集的観点から不受理とすることも多い。また、我々は無意識のバイアスの可能性も認識しており、著者の希望に応じてダブル・ブラインド査読を実施している。

俗説5 Natureの編集者は、マスコミ報道や高い被引用数が予想される論文を選び出している 誤り

大事なのは、「重要な論文である」という評価結果だ。数多くの研究分野では、被引用数は重要性を確かに反映しており、我々は、そうした実績を価値あるものと考える。しかし、Natureに掲載される論文の多くは、被引用数が高くなく、今後、高い被引用数を記録する見込みもない。それでも我々は、その論文自体に関心を引き付けるものがある、または社会に重大な影響を及ぼす可能性がある場合、出版の価値があると考える。

俗説6 Natureの編集者は、投稿論文を十分に読まずに不受理とすることがある そのようなことはしていない

俗説7 論文の著者は、Natureの非常に特異な書式ガイドラインに沿って論文を作成し、投稿しなければならない 誤り

我々が問題とするのは、投稿論文が、規定の長さにほぼ適合しているかという点と、編集者と査読者が論文に示された主張と根拠を理解できるかという点だ。論文を投稿する段階で、図表と凡例を論文の末尾に添付する必要はない。論文の書式が重要視されるのは、誌上掲載に動き出した段階でのことだ。

俗説8 NatureとNature関連誌の枠組みの中では、不受理とされた論文を別のジャーナルに転送することを著者に勧める場合があるが、編集者は転送された論文を過小評価する 誤り

編集者は、それぞれのやり方で論文の評価を行っている。また編集者は、関連各誌の基準を知っており、転送されてきた論文には、転送した編集者による検討過程が付記されているため、査読が実施される確率が高くなる。例えば、2018年2月に関連各誌の間で転送された投稿論文が外部の査読者に送られる確率は、直接投稿された論文の約2倍であった。

俗説9 Natureの編集者は、異議の申し立てを考慮しない 誤り

翻訳:菊川要

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 7

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180738

原文

Nature: the truth
  • Nature (2018-04-05) | DOI: 10.1038/d41586-018-04024-4